文学

「銀河鉄道の夜」の話

先日のテレビで、オリラジの中田敦彦が、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」の解説をしていたのを見た。なんか違和感があるな、と調べたら「銀河鉄道の夜」は第4次稿まであり、私が読んだのは「ブルカニロ博士」が登場する第3次稿だったようだ。そうなると、全て…

ボブ・ディランのノーベル文学賞受賞について

私は、とりたててボブ・ディランのファンというわけではないが、彼が及ぼした歴史的世界的影響については充分承知している。(洋楽遍歴は同時代のビートルズ・ファンから始まったからね(正確にいうと、その前にミッシェル・ポルナレフ)) 今回色々な意見が…

モンゴメリ「険しい道 モンゴメリ自叙伝」

モンゴメリ「険しい道 モンゴメリ自叙伝」「アンの夢の家」の後に出版されたモンゴメリの自叙伝である。以前触れた「果樹園のセレナーデ」の「ルウシィ・モンゴメリおぼえがき」はhttp://hakuasin.hatenablog.com/entries/2015/05/18この「険しい道」が元ネ…

小泉八雲と日本の音楽

小泉八雲と日本の音楽小泉八雲の作品を読む前に、その生涯をざっと知っておこう、ということで「ラフガディオ・ハーン 異文化体験の果てに」牧野陽子(中公新書)を読んだ。いろいろと勉強になったが、日本の音楽についての記述が興味深かった。「当時欧米人…

小泉八雲

小泉八雲小泉八雲は漠然とイギリス人という記憶があった。しかし久々に読み返した「宗像教授異考録」にアイルランドとギリシャのハーフとあった。ケルトではないか!小泉八雲が日本の怪談に興味があったのもアイリッシュ・ホラーの下地があったからであり、…

 「アイルランド幻想」ピーター・トレメイン(1992)

翻訳:甲斐万里江(2005) 先日ちらっと触れたピーター・トレメインであるが(こちら) 間に「巨人たちの星」3部作が挟まってしまった「デューン・シリーズ」再読も終わり(こちらも最後の2シリーズを購入という、最初の予定外の結果になったが)ようやく…

「死への旅」(クリスティ)の中のシェイクスピア

昨日の話の続きである。やっとその部分の原文がわかった。 'I sent Hilary Craven off on a journey to a destination unknown, but it seems to me that her journey's end is the usual one after all.' 'Aha! yes! your Shakespeare!'高橋豊による日本語…

「椿姫」はなぜ椿?

せっせとヴェルディを聴いている狭間の閑話休題。 「椿姫」はあまりに有名で、若い頃けっこう聴いているので、最近はあまりすすんで聴こうとはしないのだけれど、その分まだまだ知らない事があった。 そもそも「椿姫」は小デュマの原作「椿の花の貴婦人」か…

「トリスタンとイズー」からいろいろ

日記には書いていないが、最近はけっこう読書三昧である。 「トリスタンとイゾルデ」の原作である「トリスタンとイズー」を我々が読もうとするなら、まずは岩波文庫のジョゼフ・ベディエ編「トリスタン・イズー物語」であろう。 多くの異本、断片を一つにま…

黒蜥蜴

三島由紀夫(原作:江戸川乱歩) というわけで(こちら)三島版「黒蜥蜴」を読む。 三島由紀夫の作品は、そんなに数多く読んだわけではなく、少年時代に「禁色」「憂国」その他を読んだだけであるが、生まれて初めて「文章というものの持つ力」というものを…

床下の小人たち

メアリー・ノートン ジブリ作品に、徐々に興味が無くなってきている昨今であるが、今回の作品もあまり触手は動かなかった。 しかし、ケルトとの関連を中心にまとめた番組を見て、現金なもので、一気に興味が湧いてきた、ただし原作のほう(笑) 5巻あるそう…

虹の谷のアン(下)

モンゴメリ 漫画 原ちえこ 以前古本屋で、この(上)のみを入手したことを書いた(こちら) 結局、(下)が見つかりそうに無いので(というか、忘れていたのだが)ユーズドにあったので購入。 絵柄の好き嫌いはあるだろうが、ほぼ原作に忠実で好感が持てる。…

誰のものかは忘れたが、たぶん青春時代に読んで印象深く覚えている詩の一節があって、時折口から出てしまう。 すなわちビヨロンの〜である。それ以上は出てこないのだが(笑) で、調べたら、なかなか分からなかったのも無理は無く「ビヨロンの〜」では無く…

「美少女一番乗り」

山本周五郎 山本周五郎少年少女向け作品集の二冊目。 「水戸黄門」等の時代劇の元ネタにしても(贅沢だが)いいぐらい痛快な時代小説のてんこ盛り。(大岡越前が登場する話まである) 少女が主人公なので、より痛快さが増す(って、私がおじさんだからか(自…

「春いくたび」

山本周五郎 先日ちらっと書いた山本周五郎少年少女向け作品集の一冊目。 少年少女向けということで、幾分シンプル、明朗、勧善懲悪、活劇路線が強く、また戦前戦中の時節柄、修身色、勤皇色が強い作品もある。 しかし、深さでは大人向けの作品にけっして引け…

「春いくたび」「美少女一番乗り」

山本周五郎 本屋で山本周五郎の見慣れないタイトルを発見した。それも角川文庫である。 解説を見てみると山本周五郎の少年少女向け短編小説の初の文庫化とのこと。 「春いくたび」が昨年末、「美少女一番乗り」(なんちゅうタイトル)が今年春の発行だった。…

古城の迷路(1983)

ドロシー・ギルマン ミセス・ポリファックス・シリーズ「〜シルクロード」(1983)と同年出版だが、「アメリア・ジョーンズの冒険」(1979)よりも執筆上は前に書かれたという説もある。 というのも、「アメリア・ジョーンズの冒険」の中で、この「古城の迷…

自由の鐘(1963)

ドロシー・ギルマン ギルマンのジュニア向け時代の作品。「バックスキンの少女」との間に4作品あるはずだが邦訳は無い。 アメリカ独立前夜のボストン、誘拐された子供が当たり前のように金銭でやり取りされる時代、まさにそのようにしてイギリスからつれて…

バックスキンの少女(1956)

ドロシー・ギルマン ギルマンのジュニア向け時代の作品。「キャノン姉妹の一年」との間に2作品あるはずだが邦訳は無い。 開拓時代のアメリカ、両親はインディアンに殺され、兄はインディアンにされわれた少女。そして、兄は中身がインディアンとして帰って…

キャノン姉妹の一年(1953)

ドロシー・ギルマン ギルマンのジュニア向け時代の第4作 早くに親を亡くしたためはなればなれに暮らしていた22歳と16歳の姉妹が、叔父の遺産の田舎の湖畔の家へ、二人きりで住むために乗り込む。 いやな叔母たちと離れて自由になり、二人の未来は前途洋…

マーシーの夏(1951)

ドロシー・ギルマン ギルマンのジュニア向け時代の第3作 マーシーは個性豊かな下宿人が住む貧乏下宿屋の娘。 ひょんなことから、亡くなった元住人、人形作りのおじいさんが残した人形を使って、下宿じゅうで人形劇をやることに・・・・ サーカス、ボードビ…

カーニバルの少女(1950)

ドロシー・ギルマン ジュニア向け長編第2作。 伯父の遺産のカーニバルにオーナーとして乗り込む娘と母。相変わらず破天荒な導入部(笑) カーニバルとはサーカス、ボードビル付の移動遊園地みたいなものか。 前作でも、主人公の父親は元クラウン(ピエロ)…

ひと夏の旅(1949)

ドロシー・ギルマン 私の把握している限り、ドロシー・ギルマンの最初期の長編。 孤児院にいるジェニーは十数年ぶりに会うほぼ初対面の父親と、自宅兼改造おんぼろバスでひと夏の旅に出る。ひょんなことから、その旅に参加する人間がどんどん増えてゆき・・…

アンの愛情(1915)

ルーシー・モード・モンゴメリ 翻訳:松本侑子(2008) 油断していたら、10月に既に出ていた。この巻から単行本先発でなく、はじめから文庫本出版となったようだ。 しょっぱなからびっくりしたのが、ここにもユーライア・ヒープが登場したということ(前の事…

悲しみは早馬に乗って(2008)

ドロシー・ギルマン ドロシー・ギルマンを執筆順に読むということで、出版は最新だが、日本の独自編集のギルマン最初期の短編集である。 内容的には、一風変わったハートウォーミングや少女の心の成長の物語、スリラーに童話とバラエティに富んでいる。一風…

一人で生きる勇気(1978)

ドロシー・ギルマン おばちゃまシリーズを読み終えて、ドロシー・ギルマンは執筆順に読んでいこうと思うが、その前に自伝的エッセーがあるのでこちらから。 離婚後に女手一つで二人の子育てを終えた彼女が、ニューヨーク近郊から移り住んだカナダの漁村で初…

ミス・マープル 鏡は横にひび割れて

原作は、犯人とその夫の切ない心情から、個人的には忘れがたい作品である。 一時期やたらとクリスティの作品が映画化された時代があった。その頃は見ず嫌いだったが、同じ原作の「クリスタル殺人事件(変な邦題だ)」の出来はどうだったのかな。 題名の由来…

エンジェル エンジェル エンジェル(1996 文庫化:2004)

梨木香歩 解説にあるとおり、からくり小説なので、ストーリーは紹介できない。 この小説をなんと表現していいのか。SFやオカルトとも言えるし、宗教小説かもしれない。メルヘンやファンタジーかもしれない。しかし彼女はそこいらのファンタジーのように物…

春になったら苺を摘みに(2002 文庫化:2006)

梨木香歩 「西の魔女が死んだ」から執筆順に梨木香歩を読もうかとも思ったのだが、このエッセイを先に読むことにする。 エッセイとしてあるが、大学時代のイギリスでの滞在先のウェスト夫人を中心とした、さまざまな国の人々との交遊録である。そういってし…

赤毛のアンに隠されたシェイクスピア(2001)

松本侑子 以前から気になっていたが、やっと購入、結果的には今読んで正解だった。表題はシェイクスピアだが、英米、スコットランドもちゃんと言及されている。松本さんはアンからアーサー王、ケルトとたどって行くが、私はアンのファンでありながらケルト系…

続あしながおじさん(1915)

(Dear Enemy) ジーン・ウェブスター アニメついでにまた読む。面白いもので、こちらが成長している分読むたびに印象が変わる。今回は主人公がアイルランド系で相手役がスコットランド人(共に元ケルト)という点が非常に意味深く読めた。また、このスコッ…

「赤毛のアン」ついてのある疑問

昔からちょっと気になる事がある。ステラ・メイナードとプリシラ・グラントというアンのクイーン学院の同級生である。このふたりの同級生についての描写は極端に少なく、物語の中での必然性を全く感じない。彼女たちがいなくても「赤毛のアン」の物語には何…

サガン

「あらすじで楽しむ世界名作劇場」第3回をやっと見る。フランソワーズ・サガンの「悲しみよこんにちは」を取り上げていたが、私がサガンといえばお気づきの方も多いと思うが一条ゆかりである(爆)1972年2月号の付録(大判)で「恋人たちの時」という作品…

ようこそ!赤毛のアンの世界へ(2008/1/3 NHK放送)

タイトルだけ見たらどんな内容かわからないのだが、「赤毛のアン」と聞いたらチェックだけはせねばなるまいと奥さんに録画を頼んでいたものをやっと見る。結論から言えば4月からはじまる新番組「3カ月トピック英会話〜『赤毛のアン』への旅・原書で親しむA…

デイモンとピシアス

現在なんとなく「若草物語」シリーズを読んでいるのだが「第三若草物語」の中で脚注にギリシャ神話の「ディモンとピシアス」について言及されていた。内容が「走れメロス」に似ているなと思って調べてみたら、まさに元ネタだった。元ネタがあったとは知らな…

ふたりのロッテ

エーリッヒ・ケストナー この物語は、1991〜92年にアニメ化されており、私は途中の2,3話を見た記憶がある。しかし、原作が文庫で見つからない時点で、当時はそれ以上調べるという発想がなぜか無かったので、気になりながらもずーっとそのままであった。で…

今朝の地方紙に石川啄木の教師時代の同僚で、彼が思慕を寄せていた堀田秀子こと室岡秀子が八戸出身だと言う事が書いてあった。調べてみると 「東海の小島の磯の白砂にわれ泣きぬれて蟹とたはむる」 は八戸の蕪嶋の情景を読んだらしい!(蕪島かと思ったら蕪…

山頭火

ふと思いついて100円ショップで日本文学シリーズを何冊か買う。萩原朔太郎、梶井基次郎、中原中也等はそれこそ思春期にはまる人ははまったであろう、菊池寛は読む前に悪い話ばかりきいてしまったので、ほとんど読んでいなかったので買ってみる。「忠直卿行状…

ぺガーナの神々(1905)

ロード・ダンセイニ 気負いこんで読み始めたダンセイニだったが、どうも様子が違う。執筆順に読むことにしたのだが、それがよかったのかどうか。創作神話であるが、最初は何がいいたいのかさっぱりわからなかった。途中から人間が出はじめると、なんとなく、…

ダニッチの怪(1927)

ラヴクラフト この作品をオーソドックスな怪物退治と評した人がいたが、そう単純なものではないだろう(確かに読みやすいのだが)妖怪(?)の双子のそれぞれの姿の執拗な描写は背筋も凍る。また、片方が未だ目に見えない時の表現は映画的で、「禁断の惑星」…

狂気の山脈にて(1931 発表1936)

ラヴクラフト 太古に地球を訪れた<旧支配者>、クルウルウ、ミ=ゴ等の新たなる侵略者、また<旧支配者>が創造した奴隷人工生命体「ショゴス」等々「時間からの影」に勝るとも劣らない「頭グラグラ」感の古代史だ。また、彼等に対する哀愁感、無常観が語ら…

宇宙からの色(1927)

ラヴクラフト ごくごくシンプルなエイリアンものなのにここまで恐怖をかきたてるというのは、やはりすごいのだな。 ちなみに「クトゥルフ神話」というのはラヴクラフトが認めたとはいえダーレスが、ラヴクラフトの作品を彼なりに系統立てて称した言い方なの…

時間からの影(1936)

ラヴクラフト これはまた、気が遠くなるような、頭がグラグラするような壮大な(かつおぞましい)宇宙史観である。これも魂の入れ替えを含むが時間さえも超越しているところがすごい。下手なSFも歯が立たない。この「頭グラグラ」感はディックと近い部分が…

戸口にあらわれたもの(1937)

ラヴクラフト あの、恐怖のインスマウスの話が他にもあったとは、と言っても今回は海系のおどろおどろしさではなく、他人の肉体と魂を入替える魔術の話。これもなかなかの出来。

ロード・ダンセイニ

私は本、特に全集やシリーズものをいっぺんに買った場合、解説をざっと見るという癖がある。ラヴクラフト全集の時もそうであったが、その解説にあたりまえのように私にとっての未知の名前「ロード・ダンセイニ」があらわれた。本当にものを知らないなと思う…

チャールズ・ウォードの奇怪な事件(1927)

ラヴクラフト 逆に「クトゥルフ神話」っぽくないのかもしれないが、長編のこの作品は緻密に構築されていて、大変読み応えがあった。個人的にはチャールズは生きていて欲しかったが・・・・

クトゥルフの呼び声(1926)

ラヴクラフト 「インスマウスの影」(1931)の余りのインパクトに全集を買ってしまったラヴクラフトであるが、どうも様子が違ってきた。 上記はいわゆる「クトゥルフ神話」といわれるラヴクラフトの作品体系の代表作であるとされるが、今の時点での感想を言…

闇に囁くもの(1930)

ラヴクラフト

ラヴクラフト全集(全7巻)

H・P・ラヴクラフト 2005年に、31年かけてやっと全集が完結したことを知り購入。どうもおかしいと思ったら、最初の2巻は「傑作集」として完結しており、10年後続編を依頼された3巻目からの翻訳者が、3巻目を出版社に渡したところ、前2巻を含めた全…

夢といっては大げさだが、いつか欧米の小説を原語で読みたいと思っている。エミリ・ディキンスンの時にも書いたが、やはり原語でなければ伝わらないニュアンスがあると思うからだ。ブログ友人(と勝手に呼ばせていただくが)には、原書でがんがん読んでいら…