ブルックナー 交響曲第8番

実は最近あるきっかけで、家にある全てのブルックナー交響曲第8番を聴いていた。数えてみたら13種類あった。1曲70〜80分なので、せいぜい1日1種類である。かなり日数がかかったが、いい機会なので、録音年順に間単におさらいをしたい。ただし、実際に聴いた順番とは異なる。

1 フルトヴェングラーウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1944)ハース版準拠

フルトヴェングラーのブル8は、アナログ時代1950年代を持っていた記憶がある。この人お得意のアッチェランドは、ベートーヴェンには効果抜群だが、ブルックナーには合わないという先入観から、以前はたいして感動しなかったが、今回聴いてみると、なかなかどうして、アッチェランド以外の部分は、かなり感動できた。さすがにフルトヴェングラー

2クナッパーツブッシュベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(1951)改訂版
3クナッパーツブッシュバイエルン国立管弦楽団(1955)改訂版
4クナッパーツブッシュミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団(1963)改訂版

4は天下の名盤。何処をとっても従容たる巨人の歩みである。2 3は正規盤ではなく、まだ若きクナが、多少テンポを動かしている点があるが、他は、ほぼ4にせまっている。2の第4楽章183楽章(楽譜記号N)からの部分を、ピアノではじめ、クレッシェンドとアッチェランドを同時にかけるやりかたは、かなり新鮮味があった。
ちなみに2は1952年と表記されている盤があるが1951年の間違い。発売元によって大分音質がちがう。(クナッパーツブッシュの項は、2008/4/24に修正)

5シューリヒト:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1963)ハース版ノバーク版混合

4と並ぶ天下の名盤扱いだが、私にはテンポがせわしない部分が多すぎる。しかし、所々の美しさは比類がない、5番もそうだが、彼はウィーン・フィルから極上の響きを生み出す名手である。(彼には第9、第7の名盤がある)

6インバル:フランクフルト放送交響楽団(1982)ノバーク1版

これは、珍しいノバーク1版の演奏、それだけでも価値がある。完成度は落ちるが、一見冗長とも思えるフレーズが、ファンにはたまらん。インバルも、全集の中では、第3、第5に並ぶ名演。

7朝比奈隆:大阪フィルハーモニー交響楽団(1983)ハース版

さて、実は、今回の全ブル8視聴のきっかけは、これにあった。もともと、朝比奈隆ブルックナーの0番を、テレビからテープに落としていたのを、愛聴していたが、CD時代になって買いそびれた。仕方なく他の指揮者で買っては見たものの、はっきり言ってひどいものばかり、つくづく朝比奈隆の偉大さを知った。今回、この0番を含む限定版の全集を購入した(単独で0番は手に入らない)聴いてみると「これこれ!」この曲のチャーミングさを引き出しているのは彼だけだ。たいしていい曲と思わなかった1番、2番も、別の曲のような愛おしさを感じた。
この全集には、東京カテドラル聖マリア大聖堂での演奏が含まれている。アナログ時代、1980年演奏のセットを愛聴していたが、ここには1983年と差替えがある。最初はなつかしい1980年でそろえて欲しかったが、聴いてみると1983年は抜群に良い。1980年は、この残響の大きい会場での演奏に、指揮者もオケもなれていない部分があって、響きの仕上がりにものたりなさがあったり、テンポのづれなどがあった。(これに入っている5番が1980年だが第4楽章フーガの冒頭は実に惜しい)しかしさすがに1983年はすべて自家薬籠中とし、すばらしい演奏になった。何よりも響きがいい。これぞブルックナーという響きの前にただただ聴きほれるばかりだ。もしかしたら4を超えるのでは?と思ったので、この際だから全部を聴きなおしましょう、ということになったわけだ。結果として、自分の中では4に並んだかも知れない。その日の気分で4をとったり7をとったりしそうである。

8マタチッチ:NHK交響楽団(1984)ノバーク2版

これも響きがいい!ただし、第3第4楽章のテンポの動きは、わたしの許容範囲を超えているかも。でも、名盤。

9レーグナー:ベルリン放送交響楽団(1985)ハース版

これがまた珍しいブルックナーで、軽い、あっさりした響きの名演である。こういう解釈でも、ブルックナーはゆるぎない(下手にテンポをいじろうとしなければ)第1楽章は早すぎるぐらいだが、全然違和感がない。こってりした演奏に疲れた時は、これに限る。

10アイヒホルン:リンツブルックナー管弦楽団(1991)ノバーク2版

12とならんで、楽譜そのままに演奏すれば、ブルックナーは成功すると言う典型である。しかし、12よりは指揮者の作為が見え隠れする。私の中では中途半端な演奏になった。が充分すばらしい。

11宇野功芳:新星日本交響楽団(1992)ノバーク2版

音楽評論家でもある彼が、日頃言っている事が実現した名盤!と以前は思っていたが、今回ちょっと印象が違った。どうも、自分の中のブルックナーの響きと違うような気がした。オケのせいか彼の解釈のせいか、さだかではないが。テンポやボリュームの設定は抜群なのだが。

12堤俊作:俊友会管弦楽団(1995)ノバーク2版

なんとアマチュアオーケストラだそうだ!アマチュアでも素直に演奏しさえすれば、ブルックナーは、これだけの事ができるのだ。惜しむらくは、第4楽章で、オケが息切れしてしまうところ。しかし、アマチュアが本場、ムジーク・フェラインザールで演奏したのだもの、そのぐらいは許してあげなきゃ。

13ロッグ:オルガン編曲版(1997)ノバーク2版準拠

最後は珍しいオルガン編曲のブル8である。なんと日本企画だが、なぜか輸入盤。元々オルガニストブルックナーの、発想の元がオルガンにあると言うのは、容易に思いつく事だが、実際にこうして耳にできると妙に納得する。ただ、オルガン1つで演奏するのは大変なのだろうが、フレーズを妙に伸ばしたりするのはやめて欲しかった。