The Waveries「ウァヴェリ地球を征服す」

フレドリック・ブラウン
Angels And Spaceships「天使と宇宙船」(1954)より
この作品は彼の作品の中では、珍しくしみじみとした味わい深い作品だ。全ての電気を吸収する宇宙生物に地球が覆われてしまう話で、当然、電気を使用する一切の文化がなくなってしまう。その宇宙生物がやってくるくだりや、パニックの模様など、いつものブラウン節だが、騒ぎが沈静化した後は、ほのぼのとした光景が描かれる。テレビ、ラジオはもちろん、自動車も使えない。移動手段は蒸気機関車と馬車になる。娯楽は、素人集団による芝居や、演奏会。オチらしいオチは、最後に主人公が、もう見られなくなった稲妻を懐かしむというもの。
考えてみると、われわれが電気の便利さを享受する以前、何千年もの間、人間は電気無しで暮らしてきた。テレビのかわりに、芝居小屋や、本、CDのかわりに演奏会。そこには、再生不可能な一期一会の緊張感が現代よりもあったかも。人間の歴史の長さから言うと、電気文明の方が、特異ともいえる。
この作品の書かれた1950年代だったら、人間は、電気以前に戻れたかもしれない。これが21世紀を迎えた現在に起こるとしたら、ちょっと怖いものがあると思う。現代の人間が、自動車、テレビ、携帯電話等が使用できなくなったら、いったいどうなってしまうのだろう・・・・(気がふれる人もでるかも)わたしなぞ、すかざす、アコースティック・ベースの練習を始めなくては!