リスト 交響詩「前奏曲」

クナッパーツブッシュ指揮ベルリン・フィルハーモニー・オーケストラ(1942)
時間がないので比較的短い曲を聴く。「前奏曲」は長いことフルトヴェングラーを愛聴していた。どちらかというと外面的なこの曲を、フルトヴェングラーの演奏はキャッチャーな面を失わずに深みをもたせた名演である。それに比べクナは、キャッチャーな面をすべて台無しにしている。流麗さのかけらも無い。普通の指揮者ならこの時点で音楽が成り立たないのであるが、クナの場合は成り立ってしまうのだ。そしてそこからクナの音世界を楽しむという、クナのファンだけの世界が始まるのである。これは他の指揮者では味わえない。例えばフルトヴェングラーでさえモーツァルト40番では、モーツァルトが崩れてしまった時点でアウトであった。
ちなみにこれはSP復刻盤だがデジタルリマスターの力はすごいもので、多少ノイズはあるものの、アナログ時代のSP復刻盤とは桁違いの音のよさである。いい時代になったものだ。