人形は見ていた(1989)

ドロシー・ギルマン
ミセス・ポリファックス・シリーズ「〜ハネムーン」(1988)と「〜アラブ・スパイ」(1990)の間に書かれた、ギルマンのノン・シリーズである。
第2次世界大戦直後の独立時の混乱期のビルマ(現ミャンマー)宣教師の父が自殺し天涯孤独の身となった16歳のジェンは、アメリカにいる叔母をたよってビルマを脱出しようとこころみるが、反乱軍につかまり、すでに捕虜となっていた西洋人5人ビルマ人1人と幽閉される。主テーマはこの7人の人間模様と魂の成長。
ユニークなのはやはりアメリカ人にもかかわらず、生まれ育ったビルマの宗教観、価値観を身につけて、中身がビルマ人となっているジェンで、「バックスキンの少女」の主人公の兄が、中身がインディアンであったことを思い出す。そして彼女は自分自身のアイデンティティの確認のために、住み慣れたビルマよりも未知のアメリカを選ぶ。
いつもどおりの、おしつけがましくないニューエイジ的ないい作品だと思う。ラストは私は好きだが抵抗感ある人もいるかも。
解説に一種の心理劇とあるように、幽閉されている場面だけを抜き出してうまくまとめれば舞台劇にも使えそうだ。どっかの劇団がやらないかな。

ブルックナー 交響曲第0番

朝比奈隆 東京都交響楽団(1982)
朝比奈さんのブル0は、以前にも書いたが、大昔TVからのエアチェック(TV音源が入るラジカセで録音)を愛聴し(記憶があやしいので調べたら 1981年の大阪フィルハーモニー交響楽団かもしれない)現在は限定全集収録の1978年大阪フィルハーモニー交響楽団盤を所有している。
前にも書いたが0番は他の指揮者でさんざんがっかりしているので、もう朝比奈さんしか聴く気にならないのだが(あ、ティントナーはかなりいい)1982年の演奏が発売されているとなると、これはもう聴くしかないではないかっ!
さて、失ってしまったものは、勝手に記憶を美しく塗り替えてしまうものかもしれないが、0番をきびきび演奏して欲しい私は、1978年よりは1981年のエアチェックのほうが、きびきび度(日本語か?)が若干強いので上のような気がしていた。
今回の1982年盤は期待通りで、1978年盤より好みである。しかし、1981年と聴き比べたいなあ。CD化されないかなあ。
ちなみに、朝比奈さんは0番を1982年の札幌交響楽団と演奏したっきりで、上記を含めて計4回しか演奏していないのだそうだ。貴重だ。