ワーグナー「ローエングリン」

カイルベルト指揮 バイロイト祝祭管弦楽団(1953)
ローエングリン:ヴィントガッセン
エルザ:スティーバー
テルラムント:ウーデ
オルトルート:ヴァルナイ
ハインリヒ:グラインドル
テルラムントとオルトルートの悪役コンビが、当たり役のウーデとヴァルナイ、そして、ヴィントガッセン、スティーバー、グラインドルという、これ以上は無いんじゃないかという豪華な布陣の「ローエングリン」を入手。
近年ステレオによるバイロイトの「指環」が発売されて話題だったカイルベルトであるが、そもそも、なぜ再開されてばかりのバイロイト音楽祭に、当時40代のカイルベルトが呼ばれたかというと、ナチ色の強かったバイロイト音楽祭の戦勝国に対するイメージアップの一環として、当時アメリカで活躍していたカイルベルトを呼んだらしく、一方にクナなどの重鎮を配してバランスをとった、という事らしい。(53年はクナはいないけれども)
で、引き締まった明解な音作りながらも、味わいや深みに欠ける点がある、というのがカイルベルトのもっぱらの評判であるが、両方を求めるのも酷な話で、これはこれで、ありであろう。クナのローエングリンが無いのが寂しいのは事実であるが。
ヴィントガッセンもすごいけれど、ローエングリンはやはりキャラが違う。
やはりヴァルナイが歌うだけで世界が変わってしまうという点で、ヴァルナイを聴く演奏である。
ウーデは芸達者がゆえの泣き節が過ぎるが、まあテルラムントは情けない男(?)だからいいのか。