カルロス・クライバー(と指揮する曲)の話

あれだけ、クライバークライバーと騒いでいながらこんな事をかくのは何だが、クライバーの全ての演奏に納得しているわけではない。
例えば、今回ベートーヴェンの第5を久々に聴きなおした。アナログ時代からぴんとは来ていなかったが、やはり気にかかる。当然スタッカートで奏されるべきところがレガートになる部分が多いのである。これは極論として好みの問題なのだろうが、聞いていて気持ち悪い事おびただしい。これは邪推であるが、この録音は彼のレコードデビュー作である。レコード会社は新進の人気指揮者のデビューとして、有名曲を割り当て大いにもうけたいだろうし、彼もまだ、自分の好みの曲のみをレコード会社に主張できるほどの立場に無かったのではないだろうか?つまり、彼はこの曲を発売したくなかった(苦手としていた)?これ以降、エロイカも第9もとうとう録音されずじまいということを考えると案外あたっているかもしれない。
苦手な曲(ジャンル)がある事は指揮者として恥ずべき事ではない。フルトベングラーモーツァルトドン・ジョヴァンニ以外成功したとは思えないし、クナはそもそも苦手(嫌い)な曲は始めから振らないだろう。百凡の指揮者が、どんなジャンルどんな曲でもこなします、といっても出てくるのは百凡の演奏なのだから、それよりはよほどましである。