海老蔵襲名と昔舞台で見た歌舞伎の思い出

海老蔵襲名もやっと全部見た。彼は顔がいい。素顔は現代的だが、白塗りをすると江戸時代の役者絵そのままだ!声もいい!「暫」では花道奥からの第一声「しーばーらーくー」にほれぼれした。長らく父親の鼻にかかった声で「しーばーらーくー」を覚えていたので新鮮である。
しかし歌舞伎はよく考えられた舞台芸術だ。芝居が終わって幕が引かれても、主人公が一人花道にのこる。そこから最後のサービスで、六方を踏みながら花道を引っ込んでゆく。
花道と言えば、20年以上も前の若い頃、たぶん若者向けの歌舞伎教室的な舞台だったのだろう。えらく安かったので貧乏ながらもそれを見に行った。勘九郎芝翫の「女殺油地獄」で、クライマックスは(まんまだが)両人あぶらまみれの殺人シーン。安い席だが花道横の席をとった。なぜかというと、このあぶらまみれのシーンはまさか本当の油を使用しているはずが無く(毎日やるとしたら始末が大変)最後は花道を通るので何を使っているか確認できると思ったのだ。そして勘九郎が油をしたたらせながら花道を駆け抜けた後、私は花道に寄って、油のあとを観察、そして触っても見た。すでに固まりかけていた。寒天のようだった。つまり芝居の間はサラサラで、終わって暫くしたら固まる素材なのであろう(ほんとに寒天かも)これなら後始末も楽だ。なるほどなあと当時思ったものだ。今日の日記は番外なのに長すぎる!