エル・シド(1961)

以前にもちょっと書いた、チャールトン・ヘストンの「エル・シド」を購入。懐かしい!!(ほんとは納谷さん内海さん家弓さんらの吹替えで見たかったが)ベン・ハーほどヒットしなかったというが、私はこっちのほうが好きなのだった。
どうなのだろう。さらに強大なアフリカ大陸のイスラム国家からの侵略からスペインを守るためとは言え、スペイン内のイスラム国家の王と協力体制を組むという内容が、基本的にキリスト教圏の欧米では受けが悪かったのでは?というのはうがった見方だろうか?日本人の私にはそこら辺の事情は図りかねるが。(ベン・ハーはキリストも登場するキリスト教万歳映画だ)
3時間の長さだが、脚本の展開が早いので、それほど長く感じない。史実を映画用に改竄しているが、それはいたし方の無いところ。アルフォンソ王は、本来男3兄弟の真ん中だが、弟の替わりに、アルフォンソ王の娘で波乱の生涯を送ったウラーカを妹に配し、アルフォンソの参謀的役割を与えたのは、ソフィア・ローレン以外に主要な女性登場人物が見当たらないこの内容では、上手い手だと思う。(ちなみにこの王女役のフランス女優ジュヌヴィエーヴ・パージュは、ソフィアよりかわいいと思う)
また、史実では、エル・シドはラストのバレンシアの戦いで死なないし、アルフォンソ王の援軍もこないのだった。そこで思うに、エル・シドの2人の娘の名が、史実ではなく、吟遊詩人が語り継いだものがまとめられた「エル・シードの歌」という、スペイン最古の叙事詩から取られているという点。これは文学作品なので、フィクションも混ざっているらしいが、つまり、この映画はあらたな「エル・シードの歌」という事なのだろう。
ちなみに、エル・シドがアルフォンソ王戴冠の時、前王でアルフォンソの兄の謀殺に関与していないことを、聖書に手を置かせて、3度宣言させるシーンがあるが、これは歴史書にも残る事実らしい。王に対してこの態度はやはりすごい。すごいからこそ、歴史書にも記録されたのだろうが、王も人の子で、こんなことされたら、そりゃわだかまりも残るわな。でも、正義、信義一筋の彼らしいエピソードだ。