コブラ(1978〜1988)

寺沢武一
前にも書いたが若い頃はSFにこだわりがあった。舞台が宇宙であるというだけのスペースオペラはSFではない等。リアルタイムで接していたこの作品だが、まったくSF的(にも戦闘理論的にも)裏づけが無い、裸同然の女性のコスチュームが登場するこのアメコミ的世界も長らく抵抗感があった。現在でもそれは変らないし、セクハラであるとさえ思う。しかし、読まないことには批判もできない。今回全集が刊行されたので読んでみる。第1話は、あきらかにディックの「追憶売ります」だが、まだ「トータル・リコール」の映画も無い頃、新鮮な発端部であったことは事実。後半に行くに従い、なかなかSF的にも深くなってきて読み応えがある。私が意外だったのは、巻末の解説でオセロの中島知子が若い頃、コブラに出てくる女性の衣装に憧れていたという話。私は、女性にとってこういった衣装はセクハラ的苦痛感を与えるものだと一方的に思っていたが、何の事は無い、男性の願望だけでなく、女性もこういうの着たいんじゃないか(もちろんすべての女性ではないだろうが)そういえば、若い頃ある女性に「演歌の歌詞は男性本意の身勝手な世界(女は待つ、耐える、つくす等)だ」と女性の立場にたったつもりで発言したら「女性にもああいう世界を望む心がある」と言われてびっくりしたことがあった。若い頃の私のフェミニズムなんてそんな程度の底が浅いものだったのだ。
ちなみにアニメの「スペースコブラ」は、前野曜子の主題歌、野沢那智の軽妙な吹替え(吹替えとは言わないか)が素晴らしかったのを覚えている。