ベートーヴェン 交響曲第9番「合唱付き」

フリッチャイ指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(1957 1958)
アナログ時代、このハンガリー出身で48歳の若さで無くなったフリッチャイの「新世界」を聴いて、あまりの素晴らしさに、この第9を買った。CD化されていることを知るのが遅くて、今回「新世界」は手に入らなかったが、第9と未聴の「エロイカ」を入手した。
思えば、ベルリン・フィルがグラモフォンへの初のステレオ録音となったこの第9に、既に常任指揮者となっていたカラヤンでは無く、このフリッチャイを選んだと言うのも意味深いものがある。若い頃勝手にこの人のことを「小フルトヴェングラー」と呼んでいた。ベルリン・フィルフルトヴェングラーを失って3年、見事に彼の精神が、フリッチャイによってベルリン・フィルに甦った!といえる名演である(フルトヴェングラーはステレオ録音が開発される前に亡くなっているので、さらに価値が増す)もちろん、彼がフルトヴェングラーの真似をしているわけではない。フルトヴェングラーよりけれん味は少なく、スケールも若干小さめである(だから小フルトヴェングラー)しかし、ベートーヴェンを演奏すると言う真摯な姿勢と気迫は、けっしてフルトヴェングラーにひけをとるものではない。歴史に「もし」は無いというが、もし彼が長生きしていたら、ますますスケールと円熟味を増し、必ずやカラヤンに対抗する大指揮者になったであろう事は間違いない。(もちろん、生前から大指揮者と言われていたのだが、現在の知名度から考えると、という意味です)早世が惜しまれる。未聴の「エロイカ」が楽しみである。