Vision: The Music of Hildegard von Bingen (1994)

Hildegard von Bingen(ヒルデガルト・フォン・ビンゲン)(1098-1179)
Richard Souther
ほぼ発売と同時に買っていたこのアルバムを久々に聴いてみた。「エニグマ」の世界的ヒットにより、「中世音楽」+「ハウス」、「民族音楽」+「ハウス」のフォロワーが雨後の筍のごとくあらわれたわけであるが、このアルバムはそんなフォロワーとは一線を画すと言っていいほどの深みがある。

ヒルデガルト・フォン・ビンゲン」は中世ドイツの修道尼であるが、長年の幻視体験(ヴィジョンだね)をもつ神秘主義者であり、ドイツ薬草学の祖とされていたり、楽譜が残っている最古の作曲家(それも女性)であり、他にも多彩な才能を持ち、また中央との対立により一時聖務停止をうけたり異端視されかけたり、と一般的なキリスト教の修道尼のイメージとは違い、どこか、ゲルマンやケルトの香りのする才女である。

かたや、リチャード・サウザーは、よくは知らないのだが、スピリチュアル系あり、アンビエント・ジャズ系あり、グラミー賞候補にもなったとかいう、やはり多才な人。(CD解説によると、マザーズとの共演経験があるというが、未確認)重病で死にかけた後、キリスト教系のこういった音楽を手掛けるようになったと言うから、彼もなんらかの「ヴィジョン」か「啓示」を受けたのかもしれない。

ヒルデガルトのメロディは跳躍が多く、当時のキリスト教音楽の枠を超えていて、切なくも神秘的なである。このメロディにサウザーの絶妙なコードとアレンジが絡み、若干のエスニック的味付けもある。特に1曲目の"Praise for the Mother"と3曲目の" Vision"が出色の出来。個人的にはスピリチュアル系といわれている音楽の中で一番お気に入りなのだった。

ちなみに、このアルバムの世界的ヒットにより、知らないうちに、ビンゲン関係が、書籍やDVDを含めていっぱい出てるのにはびっくりした。