Hildegard von Bingen: Canticles of Ecstasy

こちらはヒルデガルト・フォン・ビンゲンの本来の教会音楽としての演奏。いままでこういった音楽は「グレゴリオ聖歌」とデイヴィッド・マンロウによるゴシック期の音楽(12〜14世紀)しか把握していなかったが、ヒルデガルトは、このゴシック期の音楽のノートルダム楽派と同時期である。かたや正式な教会音楽、かたや修道女が歌うためだけの音楽(確か公式には女性は教会で歌うことは禁じられていたはず)かたやフランス、かたやドイツ、かたや男性、かたや女性、と、その違いを比べるのも興味深い。しかし教会音楽の範疇での比較検討も面白いのだが、やはり彼女の音楽はその範疇を超えている部分があるとも思う。それはなんと言っても彼女の音楽が持つ「妖しさ」ではないだろうか。もちろん教会音楽なので、目立ってはいないのだが、何かそういう「魅かれてはいけないものに魅かれていってしまう(異界への誘いか?)」といった禁断の悦楽感がそこはかとなく漂って入るような気がする。もちろん癒し系としても一流だが。そこらへん、さらにつっこみたいところ。
そういえば、彼女の得た「ヴィジョン(幻視)」は、漠然と映像的なものかと思っていたが、それ以外に直接的に「神」の言葉も聴いたようで、これはびっくり。それもその「神」の言葉が、当時の教会の批判をしているというのだから痛快である。(そりゃ、異端視もされるっちゅうの)