ケルトの白馬(2000)

Sun Horse, Moon Horse (1977)
ローズマリー・サトクリフ
最近は時折娘のために図書館に行ったりしている。娘のそばを離れないようにして周りを眺めると当然少年少女向けの本が目に入るが、タイトルに惹かれて手にとって見ると、少年少女向けとはいえ侮れない内容の本がけっこうある。「ケルト」という言葉に敏感になっているため、ローズマリー・サトクリフを発見。「ケルトの白馬」があれば借りたのだが、無かったので購入してしまう。
サトクリフは、少年少女向けの神話世界に近い歴史ものを書く作家で、ファンタジーにも接近している。やはり何より、ケルトを取り上げてくれているのでありがたい。幼少の頃の病が原因で下半身不随だったというが、そういった点が作品に対する並々ならぬ情熱につながっているのだろう。アーサー王関連も多いようだし、本腰を入れて読もうかな。
で、この作品だが、実際にイギリスに存在する古代の地上絵からインスパイアされた創作であるが、ケルトの詳細な民俗描写は史実に基づいているようで読み応えがある。
ケルトは基本的に母系社会で、族長の娘に優秀な戦士を婿取りする形で族長が継承されていく。これは古代日本にもあったようで、そのなごりが江戸時代の大阪商人である。よく江戸の商人は三代でつぶれるが、大阪はそんなことは無い、等と言われるのはそういうことで、江戸は代々息子に継がせるので子供はどんどんぼんくらになって三代でつぶれるが、大阪は優秀な番頭を婿に迎えるのでその心配が無いと言うことである。
話はそれたが、主人公は芸術家としての才能をもった族長の息子で、彼が成人した頃に彼の部族は、圧倒的な武力を持つ他の部族に征服されてしまう。最初は、どうやって地上絵に話が繋がるのかと思っていたが、なるほどと納得。予想外に厳しく切ない物語で、抜群のストーリーテリングである。私のサトクリフ入門にはちょうど良い本だった。
ケルトの芸術は紐紋様を主体とするが、呪術的で宇宙の深淵を思わせる魅力があり、縄文とも共通点があるのかもしれない。
ちなみに地上絵と言えばナスカだが、イギリスにも多数あることをはじめて知った。
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ただし、くだんのアフィントンの白馬(約3000年前)の他は、約400年前のものとのこと。