天平の聲−東大寺お水取りの聲明

30年程前、民族音楽、邦楽を聴いていた頃、仏教の声明のレコードを買った。声明にもいろいろあるが、主流は平安以降の「天台声明」「真言声明」で、洗練された、重厚な美しさ(?)を持っている。もちろんそれも素晴らしいのだが、その時私が魅かれたのは、平安以前の奈良仏教である東大寺お水取り、いわゆる「修ニ会(しゅにえ)」と呼ばれる儀式で唱えられる声明だった。その時聞いたのは、実際の儀式中の録音で(たぶん)部屋の中をぐるぐる歩き(走り)回りながら唱えるもので、ある種呪術的民族音楽的な原始性、野性味が残っているところが私にはツボだったのだ。
今回買ったのは、レコーディングを前提としたコンサート形式。よって仕上がりが美しくなってしまい、ちょっと物足りない。