春になったら苺を摘みに(2002 文庫化:2006)

梨木香歩
西の魔女が死んだ」から執筆順に梨木香歩を読もうかとも思ったのだが、このエッセイを先に読むことにする。
エッセイとしてあるが、大学時代のイギリスでの滞在先のウェスト夫人を中心とした、さまざまな国の人々との交遊録である。そういってしまえば簡単に聴こえるが、今更ながらに国の数だけ常識や習慣があるものだと改めて驚く。考えてみれば日本の国内でさえ、関東と関西がどれだけ違うかなどということが話題になったりするのだから、世界となったら何をか言わんやである。
ウェスト夫人はクエーカー教徒だという。
「クエーカー」というのは寡聞にして知らなかったが、17世紀にイングランドで発生した、プロテスタント系の教派で、「内なるキリスト」を重要視する、ある意味ニケーヤ会議で異端とされたグノーシスの近代へのよみがえりのような(個人的な意見)宗派である。
教会に権威を持たせるためのニケーヤ会議後のキリスト教より、グノーシスのほうがよほど本来のキリストの教えに近いと個人的には思っているし、いわゆるスピリチュアリズムにも近いと考えている。
もしかしたら「西の魔女が死んだ」であらわされるスピリチュアリズム的な部分も、そっち方面からの影響があるのかもしれない。