アンの愛情(1915)

ルーシー・モード・モンゴメリ
翻訳:松本侑子(2008)
油断していたら、10月に既に出ていた。この巻から単行本先発でなく、はじめから文庫本出版となったようだ。
しょっぱなからびっくりしたのが、ここにもユーライア・ヒープが登場したということ(前の事情はこちら
アンがダイアナに、将来オールドミスになって尋ねていったときのために、部屋をあけておいてくれ、客用寝室でなくていいから、と語るシーン。「ユーライア・ヒープみたいにつつましくするから」とある。
ちなみに村岡訳ではユーライア・ヒープの名は一切出てこない。
原語は以下のとおり。
Not the spare room, of course -- old maids can't aspire to spare rooms, and I shall be as 'umble as Uriah Heep, and quite content with a little over-the-porch or off-the-parlor cubby hole."
原語が読めるサイト
ttp://www.readprint.com/chapter-7441/Lucy-Maud-Montgomery

こういう事がまだまだあるのなら、やはり何年かかっても松本さんに全部訳してもらわなければ。
ちなみに、アン・シリーズの「アンの友達」はアンが直接出ないながらも(出るのもあるが)世界を共有する短編集であるが、「オリビア叔母さんの求婚者」は、オールドミスに西部から戻った昔の恋人が求婚する話で、結婚して住むためにアボンリーのリンド夫人の家を買ったというくだりがある。(マリラが、旦那の死んだリンド夫人に、グリーンゲイブルズでいっしょに住もうと誘ったため、元の家は売りに出された)
この話は、この「アンの愛情」で大学へ行ったアンに、リンド夫人が手紙を書いた折、元の自分の家を買ったマクファーソン夫婦について言及するくだりがある。
またアンが直接登場する「奮い立ったルドヴィック」についても言及されている。
勿論、「アンの友達」(1912)が「アンの青春」(1909)と「アンの愛情」(1915)の間に出版されていることからおきた現象なのだが、これ以外にはこういった例が無いので貴重であることは確か。