「恋愛少女漫画家」(2003)

一条ゆかり
一条ゆかりの自叙伝である。が、会話調のかるい文体で、本人の本音が生々しく伝わる。
もともと少女フレンドに投稿し、見込まれて1年ほど作品を編集者に見てもらい、その後「第1回りぼん新人漫画賞」に腕試しで送った作品が一席なしの準入選(同時準入選が弓月光)、ここらへんは読んでいた当時も知っていたが、講談社の編集者が気持ちよく集英社デビューを認めてくれ、その後の一条の出世を見て、その編集者が上からこってりしぼられたという話は知らなかった。
しかし、講談社:里中満智子 集英社:一条ゆかり 白泉社美内すずえ という布陣は天の采配で、うまく住み分けができていたと思う。
また、初めて、編集者の意見、拘束を全く受けずに書きたいことを書いたというのが「デザイナー」だったというのも興味深い。ある意味、第二の転機(第一は「風の中のクレオ」と勝手に思っている)だったのだな。
そして、書きたいものを書いてすっきりした後、書きたくないものを書く、もっとも自分が嫌いな性格の女性を主人公にしよう、と決心して始めたのが「砂の城」っていうのもまた、すごい話だ。
そして「砂の城」のストレス発散が「有閑倶楽部」(爆)
また、「デザイナー」のタイトルも「プライド」とどちらにしようか迷った、という話から現在連載中の「プライド」へ話がつながる。つまりは、もっとも書きたいテーマがプライドなのだ。
漫画を描くテクニックは自分で学び取るものだ、という観点から、漫画学校の講師を断っている、という話は共感できる。ちょっと前に、ポール・マッカートニーがロックの学校を作ったとか作らなかったとか言う話を聴いて、クラシックではあるまいし、ロックは学校で学ぶものか?ポールよ、あんたも独学だったろうに、と思ったことを思い出す。
また、本人の生々しい恋愛話も興味深い。
恋愛体質じゃないから、恋愛に憧れる。恋愛に憧れるから、恋愛漫画が描ける。
なるほど〜。