人形は見ていた(1989)

ドロシー・ギルマン
ミセス・ポリファックス・シリーズ「〜ハネムーン」(1988)と「〜アラブ・スパイ」(1990)の間に書かれた、ギルマンのノン・シリーズである。
第2次世界大戦直後の独立時の混乱期のビルマ(現ミャンマー)宣教師の父が自殺し天涯孤独の身となった16歳のジェンは、アメリカにいる叔母をたよってビルマを脱出しようとこころみるが、反乱軍につかまり、すでに捕虜となっていた西洋人5人ビルマ人1人と幽閉される。主テーマはこの7人の人間模様と魂の成長。
ユニークなのはやはりアメリカ人にもかかわらず、生まれ育ったビルマの宗教観、価値観を身につけて、中身がビルマ人となっているジェンで、「バックスキンの少女」の主人公の兄が、中身がインディアンであったことを思い出す。そして彼女は自分自身のアイデンティティの確認のために、住み慣れたビルマよりも未知のアメリカを選ぶ。
いつもどおりの、おしつけがましくないニューエイジ的ないい作品だと思う。ラストは私は好きだが抵抗感ある人もいるかも。
解説に一種の心理劇とあるように、幽閉されている場面だけを抜き出してうまくまとめれば舞台劇にも使えそうだ。どっかの劇団がやらないかな。