老人たちの生活と推理(1988)

コリン・ホルト・ソーヤー
別名「海の上のカムデン騒動記」シリーズの第1作。「少年探偵団」ならぬ「老人ホーム探偵団(ごっこ(笑))」である。
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ttp://www.tsogen.co.jp/wadai/0506_03.html
本屋でこのシリーズの作品をたまたま見かけ、「おばちゃまシリーズ」を読んだせいか、年をとってきたせいか、なんか面白いかも、と第1作から購入した。
ギルマンも一段落したので、ようやく読み始められる。

「海の上のカムデン」は老人ホームという言葉から我々が受けるイメージと違い、かなりセレブが入る高級ホテル並みのサービスが売りのようだ。
作者は文学博士、大学講師、女優兼放送作家という経歴の持ち主で、作者自身も老人ホームに入ってからミステリー作家になったという変り種。
そのせいかどうか知らないが、老いに対する考察はリアルかつシビア。例えば作中人物の発言に「若者の終身刑は絶望的だが、老人には3,4年の損失に過ぎないかもしれない」といった意味の言葉があるが、どきっとする。
よく、年寄りの殺人事件などが報じられると、「そんな年になってなぜ?」と思ったものだったが、つまりはそういうことか?
それはそれとして、仲良し(といった生易しいものではないが)4人組のおばあちゃんと、たぶんこれからもパートナーとなるであろう「警部補とその助手」のからみが楽しい極上のユーモア・ミステリー、かつ深みのある作品。
マープルと違い、おばあちゃん達は現場を荒らして警察の邪魔をしかねない勢い。
しかし警部補の暖かくも冷静な視点により、おばあちゃん達の発見した事柄を見事にまとめてゆく。もしかしておばあちゃん達は警部補の手のひらの中?・・・と思いきや(笑)

殺されたカムデンの平凡な老婆が、実はカムデンの多数の人間を強請っていたと分かってくるのだが、その強請られた人々の過去もなかなかにドラマティック。