ファウンデーション3部作(銀河帝国興亡史)(1951〜1953)

アイザック・アシモフ
一般にはSF界の金字塔であるが、現在の読者が読んだらどんな感想をもつだろう。
覚えておかなければいけないのは、この作品が1942年〜1950年までに不定期でSF雑誌に掲載された中短編をまとめたものであること。そして、当時はSFの単行本は存在せず、SF作家にとってSF雑誌掲載される事のみが自分の作品が世に出る機会だったということ。
そうなると必然的に、まずSF雑誌の編集長に気にいられなければならない。次に読者の評判が良くなければならない。そうしないと、次の作品が掲載される望みが無いからだ。
この作品も、アシモフがそういう足かせの中奮闘している様子が、特に前半に感じられる。
後半のほうが作品としての出来がよく深みがあるということは、このシリーズの人気が定着したがゆえに、ある程度割当てられる枚数にも余裕ができ、内容も書きたい事が自由に書けるようになったからだ。
そういう意味では、期せずして当時のアメリカSF史の流れをも体現している作品といえる。
ので、もし前半が古色蒼然と思う人がいたら、上記の分割り引いて考えていただきたい。
また、ストーリー的には半ばでありながら、シリーズを(いったん)終了させたわけも、この雑誌掲載ということに深くかかわっていた。読者がこのシリーズの以前の作品を読んでいるという保証が無いため、何らかの形でそれまでのシリーズの内容を簡単におさらいする部分を作品中にもりこまねばならなかったが、その手法が限界に来てしまった、というのだ。単行本があたりまえの時代なら、まず考えられない中断の理由である。
ちなみに、考えられなかったSFの単行本が、なぜ刊行されるようになったかについて、初期短編集「母なる地球」の解説に興味深い事が載っていた。
SFが雑誌でしか読めない時代は、SFファンはその雑誌を単行本代わりに大事に保存していた。ところが第2次世界大戦勃発により、SFファンが出征中に家族がその雑誌を物資供出してしまった。戦後、さぞかしSFファンはかつて愛読したSFを読みたかろう、と目をつけた人間が、続々とSFの単行本を刊行し始めた、ということらしい。漠然とSFの社会的地位が上がったがゆえに単行本が出るようになったと思っていたが、目から鱗だ。