春朗合わせ鏡

高橋克彦
以前ちらっと触れた、高橋克彦さんの捕物帳シリーズ「だましゑ歌麿」「おこう紅絵暦」の続編が文庫化されていた。(こちら
続編と言うよりは姉妹編という言い方を出版社はしている。
第1作は同心仙波一之進、第2作はその妻おこうと舅の左門が主人公で、第3作は前作でおこうの助手格だった若き日の葛飾北斎「勝川春朗」が主人公という趣向だ。
ちなみに単行本が出版済みの第4作「蘭陽きらら舞」は、本作で登場し春朗とほぼコンビで活躍した「陰間」(現代で言うところのニューハーフ)の蘭陽が主人公らしい。
同じ世界の時系列でありながら、主人公を移してゆくというのは、舫鬼九郎の第3部にも見られた趣向だが、シリーズとしてのマンネリを防止すると同時に、以前からの登場人物が登場することによってシリーズファンも裏切らないと言う、なかなかに考えられたよい手法であると言える。
また、浮世絵師ということで高橋さんにとってはまさに自家薬籠中の読み応え、「北斎殺人事件」の「北斎隠密説」を思わせる箇所もあり、ニヤリとさせられる。気持ちのいい仲間がどんどん増えるのはうれしいが、おこうの出番がめっきり減ったのはさみしいな。