松風の記憶(中村雅楽探偵全集5)その2

戸板康二
「第三の演出者」(1961)は、新劇を舞台にした、何人かの登場人物の話の聞き書きをそのままつなげると言う、つまりは、各人のものの見方で物語が複数方向から書かれるという、芥川龍之介の「藪の中」的な構成をもった作品。すぐには思い出せないが、海外ミステリにも、似た様な趣向があったと思う。
最初は、事件が何かも語られないのが、逆に読者を引き込むし、幾分のオカルト色もいい味付けになっている。
そして、真相が分かってみると、その「聞き書き」の部分に、真相への推理元がちゃんとすべて書かれていた、という、心地よい「してやられた感」はこの作品でも健在である。

解説によると、(エッセイによると生放送ドラマ時代にもドラマ化があったらしいが)この雅楽シリーズ、1979、1980、1981年に雅楽:中村勘三郎(先代)語り手の竹野記者:近藤正臣でドラマ化されていたとのこと。うーん何とか見る手立てはないものか。
個人的には中村勘三郎(先代)はイメージじゃないな。現勘三郎のほうが合っているが時代的には若すぎたろう。同様に仁左衛門(前片岡孝夫中村吉右衛門も若すぎたろう。
雁治郎なんか良かったのでは?大穴で冨十郎もあるな(笑)
個人的には藤十郎がもっと年をとったらやらせたいが、女形専門だからキャラが違うか。

さて、いよいよ雅楽シリーズ以外の作品だな。