奇譚 銭形平次(PHP文庫)

野村胡堂
銭形平次シリーズの中から、胡堂本来の持ち味とされる伝奇色の強い作品を集めたもの。
例の「金色の乙女」は、怪しげな団体の怪しげな儀式とか、ちょっとこれは・・・という気もするが、「ですます」調の語り口とあいまった、当時の一種の様式美として捉えればいいのかもしれない。
しかし、「金色の乙女」といい、平次と祝言をあげる「七人の花嫁」といい、初期作品ではお静はけっこう大変な目にあっていたのだな(笑)
その「七人の花嫁」で、お静はいわばおとりになるわけだが「高田のお薬園の手入れの時だって、お茶の水の空家に吊るされた時だって、親分は見事に救って下すったじゃありませんか」と語っている。「高田のお薬園の手入れ」とは「金色の乙女」だが「御茶ノ水の空家に吊るされた時」はどの作品だろう?うーん気になる。
ちなみに、平次のライバル、石原の利助が体を痛めたとの事で、途中から一人娘のお品が十手を握るが、女目明かしとは、なかなかにそそる設定(笑)調べたら長谷川一夫の平次シリーズには顔を出しているようだ。