ヴェルディ「椿姫」

ショルティ指揮 コヴェント・ガーデン王立歌劇場(1994)
アンジェラ・ゲオルギュー
フランク・ロパート
レオ・ヌッチ
アゴスティーニ・オペラ第2弾である。
第1弾はその5倍以上の値段で(涙)とうの昔に購入済みだったのでパス(笑)
さて、実は椿姫の映像は自分で買ったことは無い。
大昔のカレーラス、スコットはテレビから録画したものだし、LDは実は頂き物。
そのLDは、レヴァイン指揮のメト盤で、ゼッフィレッリ演出の映画版、出演はドミンゴ、ストラータス。
で、なぜ自分で買ったことがないかというと、やはりイメージ的にこれだ!という「椿姫」の映像を当時見つけられなかったのだ。
(なので、さまざまな椿姫に接することは接していた)
歌も大事だがやはり見た目は大切で、ヴィオレッタもそう歳を取っていてはいけないし、アルフレードは年下の設定だろうし、ヴィオレッタに夢中になってしまう若々しさと危うさの直情性が画面からにじみ出てこないといけない。
そうなると、いかにも歳をごまかすためにひげを生やしました、といった風情のドミンゴは興ざめである。
その点、この映像におけるゲオルギュー、ロパートは申し分ないところ。
さて、肝心の音楽だが、標準は超えているだろうと予想はしていたが、予想を超えた出来で嬉しい誤算。
前にも書いたがヌッチは私がオペラを見始めた頃が全盛のイタリア・バリトンだが、ここまで衰えが無いとは思わなかった。実にうまい。(どうでもいい話だが、素顔は似てないのだが、舞台化粧をすると、なぜかゲイリー・オールドマンの雰囲気がする(笑))
ゲオルギューは最近ようつべでいろいろ見ていたとおりの素晴らしさ。
ロパートは、圧倒的な声量、かつ古き良きイタリアン・テノールの香りがあるのが嬉しい。
脇役陣も必要かつ充分。
激情の指揮者ショルティも激情のままにいい具合に歳をとった。かねがね嫌いだと言ってきたが、こういう指揮振りを聴くと撤回せねばなるまい。
何よりも、あまりに王道オペラであるために、今まで「椿姫」を客観的に見る(聴く)癖がついていた私が、泣いてしまったのだ。
「椿姫」で泣いたのはたぶん初めてであろう。
「椿姫」を初めて見てみたいという人にも、オペラを初めて見てみたいという人にも、標準盤として充分お勧めできると言える。
アゴスティーニをよいしょするわけではないが、2,000円弱でこれからもこういう水準が維持できるなら、これは快挙である。
ちなみに、以前「花から花へ」をようつべを紹介したとき「ラストの最高音が無いのは物足りないけれど」と書いたが、解説によるとこの最高音はカラスから始まったのだそうだ。まあ、第1幕からあんな高い音を出すのは、カラスぐらいにしかできんわな。