凶笑面(2000)

北森鴻
ちょうど1年ばかり前、書店で「写楽・考」というタイトルの文庫を見つけた。高橋克彦さんのファンというのみならず、江戸文化等に興味を持つ身としては「写楽」ときたら、一応は内容を確認しなければならない。
そうしたら、民俗学ミステリーだというではないかっ!星野之宣諸星大二郎等々のファンには大好物である。
しかし、シリーズ第3作とのこと。そうなると、まずは全部揃えなければ気がすまない性質(たち)なので、第1作から揃えるしかない。
で、3作揃えたところでいつもの悪い癖で、1年間寝かせてしまったのだった(汗)で、まあ連休で時間もあることだしと、改めて挑戦。
ページをめくるといきなり「諸星大二郎先生の「妖怪ハンター」に捧ぐ」とあり、思わずにんまり。
異端の民俗学者(かつ鉄の女)蓮丈那智とその助手内藤三國のコンビによる、連作短編シリーズであるが、(解説にもあるとおり)いわゆる民俗学的な謎と現実に起こった犯罪の謎、そしてさらにその両方を結びつける根底に潜む謎の多重構造は、いわゆる歴史ミステリーでは既存のものだが、切り口や、その結果がうならせられるほど説得力がある。特に「不帰屋」は見事。
この人も1961年生まれということで、やはりほぼ同世代である。嬉しい限りだ。
ちなみに、他のシリーズの主役が登場する作品もある。解説によると、そっちのシリーズにも蓮丈那智、内藤三國(さらに他のシリーズの主役まで)が出てくるという。これは読まねばならん、ずるいではないかっ、といいながらも嬉々として読んでしまうんだろうなあ。
さらにちなみに2005年、あの!木村多江が主役にドラマ化されたというではないか!ちょっとイメージは違うが木村多江のファンとしては見たかったなあ(涙)