モーツァルト「フィガロの結婚」

プリッチャード指揮 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団(1973)
アゴスティーニ・オペラ第6弾である。(第5弾「アイーダ」はスルー)
配役は以下のとおり。
フィガロ:クヌート・スクラム
スザンナ:イレアナ・コトルバス
ケルビーノ:フレデリカ・フォン・シュターデ
伯爵夫人:キリ・テ・カナワ
アルマビーヴァ伯爵:ベンジャミン・ラクソン
バルバリーナ:エリザベス・ゲイル
当初、カナワ嫌い、コトルバス嫌いという事で、全く食指が動かなかった。
私が「フィガロ」を聴き始めた頃、フィガロの映像といえばベームの映画盤(1975)が定番だった気がする。なのでこの映像は全く知らなかったが、ネット上では既に古典的名盤扱いだということを知った。
また、男性陣は全く知らないが、女性陣はカナワ29歳、コトルバス34歳、フォン・シュターデ28歳という、驚くほどの若さであることもあって、見てみることにした。
(フォン・シュターデはショルティ盤では35歳だが、一気に老けた感あり)
コトルバスは若さのせいか、演目のせいか、「泣きのソプラノ」の嫌味も無く、笑顔が輝くばかりで、なんだ、こういう人だったのかと目から鱗(でも声は嫌い(笑))
カナワは、後の美貌に比べればまだ野暮ったさが残るが、それはそれで好感がもてる(青木さやかかとオモタ)(でも声は嫌い(笑))この人はベームの映画盤でもそうだったが、もう一つ演技に軽さがあるといいのに、重ったるくって。
フォン・シュターデはこの時点では文句のつけようが無い。
フィガロ、伯爵の男性陣も共に36歳、配役の関係から中年になってしまう伯爵も、「セビリアの理髪師」の続編と言うことを考えれば、本来若くてしかるべきで、これは良い。ただ、実力的には問題ないものの、欲を言えばキャラ作りにもう一癖二癖あってもよかった(そこらへんが、この後一流以上になれなかった理由なんだろう)
バルトロのユーモラスな演技も秀逸。
オケについては、個人的にはもうちょっと遅いテンポが好きだし、ウィーン的なためや遊びが欲しいが、イギリスのオケらしい、すっきりした正確な演奏で、これはこれでいいのだろう。
演出は正攻法、カメラアングルも良く、歌も演技も欠点が無い。値段を考えたら、「フィガロ」の入門編には最適の1枚。
ただし、(しつこいが)個人的にはベームの日本公演をとるけどね。(また見たくなってきたぞ)
しかし、このオペラを見るたびに思うのは、この世に完璧なオペラがあるとすれば、それはフィガロだ、ということだ。
ちなみに、通常はカットされる最終幕のマルツェリーナとバジリオのアリアが聴ける。