「ショービーズ・ストーリイ」(1990)「踊ってガナムへ」(1993)「もうひとつの物語 -もしくは、内海の漁師」(1994)

アーシュラ・K・ル・グウィン
短編集「内海の漁師」(1994)に収められた「チャーテン理論」の成り立ちを描く「ハイニッシュ・ユニバース」の3つの中篇。
「ハイニッシュ・ユニバース」では、物質の移動は光速を超えられないが「シェヴェック理論」により情報に限って光速を超えることは可能だった。
以下、解説を引用する。
「チャーテンの"場"は結ばれた二点間で物体を瞬間移動させるが、同時に知性体の意識が現実を決定する重要なファクターになるといった仮定に基づいて(中略)むろん、これは厳密な物理学的な理論を下敷きにしたものではないが(後略)」
この解説は1997年の翻訳時のものだが、実は「量子論」が念頭にあれば「物理学的な理論を下敷きにしたもの」と充分いえるのではないか?(最後には「ロマンス」が「時」を遡らせてさえしまうのだ!)
ちなみに、時系列的には「闇の左手」の後になり(ゲセン出身者が「エクーメン(宇宙連合)」に既に参加している)今のところ「ハイニッシュ・ユニバース」の一番未来を扱っている。チャーテン理論を得た「ハイニッシュ・ユニバース」のこの先の展開を、ル・グウィンは書く気があるんだろうか。