世界の合言葉は森(1972)

アーシュラ・K・ル・グウィン
以前、ル・グウィンのハイニッシュ・ユニバース・シリーズが適正価格になりつつあると書いたが、長年数千円の値段がついていた、この作品を含むハヤカワSF文庫のことであったのだが、その時買っておけばよかったのに、油断している隙にあっというまに売れてしまい、現在また数千円である(涙)
しかし、手はあった!ハヤカワSF文庫に収録されている「世界の合言葉は森」と「アオサギの眼」(1978)(ノン・シリーズ)は、実はそれぞれ下記にも収録されており、こちらはかなりお安いのであった。
「世界SF大賞傑作選 7」講談社文庫
「女の千年王国」サンリオSF文庫
というわけで、こちらをなんとか購入したので、長年読みたかったこのヒューゴー賞受賞作品も、とうとう読めるのであった。中篇扱いだが、長編といってもいいぐらいの長さを持つ。
さて、作者が「書いている間不愉快だった」と語ったとおり、文明至上主義(何をもって文明とするかという問題はあるが)男性至上主義、西欧植民地主義の傲慢さ、残虐非道ぶりが、あからさまに描かれている。ただし、それに対する報復も、徹底的に行われるのだが。
時代は、時系列的には「所有せざる人々」(1974)のあと、宇宙連盟も発足して間も無く、「所有せざる人々」で発明がほのめかされていたアンシブルが、ようやく実用化され始めた頃で、未だ地球を始めとする惑星間のパワーゲームが残存している。
時系列的にはさらにその後に当る「辺境の惑星」(1966)「闇の左手」(1969)では、宇宙連盟からの他星への入植者や、連盟への加入を勧めにくる使節団は、現地への文化的影響は勿論、攻撃も報復も厳禁されている。そういったルール作りの背景に、この星での事件があったのかもしれないと思うと、ちゃんとシリーズの首尾一貫した流れがあるということがわかる。
しかし、それよりもやはり読みどころは(どこかインディアンを思わせる)現世界と夢幻界は同じものだとする原住民の思想、生態、(超)能力であろう。
ちなみに、海外サイトによると、アヴァターがこの作品との内容の類似を指摘されているようだ。なので、アヴァターを見た人が、読んでみてもいいかも。