R・シュトラウス「エレクトラ」オペラ映画

ベーム指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1981 1982)
エレクトラ:レオニー・リザネク(ソプラノ)
クリタイムネストラ:アストリッド・ヴァルナイ(メゾ・ソプラノ)
クリソテミス:カタリナ・リゲンツァ(ソプラノ)
オレスト:ディートリヒ・フィッシャー・ディースカウ(バリトン)
エギスト:ハンス・バイラー(テノール)
オレストの後見:ヨーゼフ・グラインドル(バス)
老いた下僕:クルト・ベーメ(バス)
というわけで、以前にもちらっと書いた(こちら)「エレクトラ」を久々に通してみる。
今見ると、どれだけ豪華な配役かがよくわかる。買った当初はどれだけ無知だった事か。
その後メイキングが発売されるほどの、凝りに凝った演出は好みが分かれるところであろうが、見ごたえは充分ある。
今回はリゲンツァが映っている映像

この話は、ギリシャ神話の話で、ミケナイ(ミュケナイ)王アガメムノンの娘エレクトラが、王を殺したかつての王妃(かつ実の母)クリタイムネストラ(クリテムネストラ クリュタイムネストラ)と王の従兄弟で、その後釜に座りクリタイムネストラと結婚したエギスト(アイギストス)に対し、父アガメムノンの仇を討つ(手を下すのは、弟のオレスト(オレステス))話である。
これだけ読むと、クリタイムネストラが悪いように見えるが、彼女にも言い分はある。
元々この話は「トロイの木馬」で知られる「トロイヤ戦争」の後日談で、そもそも、トロイヤを攻めるギリシャ軍の総大将アガメムノンが、戦勝祈願の生贄の鹿を捕らえたときに「アルテミス(戦の女神)でも、こんな立派な鹿は捕らえられるまい」と口を滑らせたせいで、アルテミスの怒りを買い、海が荒れて出航できなくなってしまった事から始まる。
アガメムノンは、神託により実の娘(つまりクリタイムネストラの娘)イピゲネイヤを生贄として捧げなくてはならなくなり、娘を英雄アキレウス(アキレス腱の人ね)との縁談があると偽って呼び寄せ、首尾よく娘を生贄としてトロイヤへ出航した。
王妃クリタイムネストラは怒り狂う。おまけに10年後(10年も戦争するって大変だ)戦いに勝って戻ってきたアガメムノンは、トロイヤの王女カッサンドラを戦利品として持ち帰ってきた。それも面白くないだろう。
ちなみにカッサンドラもかわいそうな女性で、太陽神アポロンに言い寄られ、受け入れてくれたら予知能力をあげよう、といわれ、予知能力を得たとたんにアポロンが自分を捨ててゆく事を予知し、結局アポロンを拒んだせいで、アポロンから、予知した事を誰からも信用されない呪いをかけられてしまう(ギリシャの神々って、本当に自分勝手)
なので、トロイヤ戦争の原因、パリスがスパルタの王妃ヘレネを強奪して戻ったときも、戦争に負けることを予知して反対をするのだが、誰も信じてくれなかった。あげくにアガメムノンにつれられミケナイに来たものの、王妃のアガメムノン殺しの際に、いっしょに殺されてしまうのであった。かわいそう過ぎる。
さて、エレクトラにとって母は父の仇であるが、同時に父は姉の仇でもある。姉をとらずに父をとったというのは、姉とそんなに仲が良くなかったのかしら?等と思ったりする。