落日の剣 真実のアーサー王の物語

ローズマリ・サトクリフ(1963 翻訳 2002)
この本も長らくつん読状態だったが、アーサー王関連再読の勢いを借りて、やっと読みはじめる。
私は、政治的、宗教的な要求によって成り立った、いわゆる「中世騎士物語」としてのアーサー王伝説には興味がない。
興味があるのは、一つ目はアーサー王の真実の姿であり(「キング・アーサー」のDVD(こちらこちら)を買ったのもその理由から)二つ目は、いかに後世に粉飾されていても、消しきれずにアーサー王伝説に残る「ケルトの世界」である。
先日の「アーサー王の世界」(こちら)によると史実としてのアーサー王のモデルは二人いる。
当時のイギリスは(上記の「キング・アーサー」の記事にも書いたが)ケルト人、ブリテン人(ローマに見捨てられたローマ化したケルト人)侵略者としてのアングル人/サクソン人の三つ巴の状況で、サクソンと戦った(ブリテン人の伯爵と呼ばれた)ブリテン最後のローマ人、アンブロシウス・アウレリアヌスと、その後継者であり「バドンの丘の戦い」で寡兵をもってサクソン軍を撃退したアルトリウスである。
勿論、これも数少ない歴史的資料から伺える「説」の一つである。
サトクリフはアンブロシウスをブリテンの王位についたとし、彼の兄ウーゼルがブリテン女性に産ませた庶子がアルトス(アルトリウス)という設定(叔父、甥の関係、この伝承も確かにある)を元に、彼女の推理と想像力で、彼女流の真実のアーサーの物語を紡ぎ出した。
ケルトとローマの混血であるというアルトスが、自分の出自に対してコンプレックスを抱いたり、己のアイデンティティで悩むパターンは、ある種サトクリフの得意技であるが、アーサー王のキャラクターに陰影を与える事に成功している。
と、読み始めたはいいのだが、途中で実はこの作品、独立しても読めるのだが、サトクリフの「ローマン・ブリテン4部作」の中の「ともしびをかかげて」と登場人物、また時系列的にもつながっている事を知った。
サイトによっては「落日の剣」の前に「ともしびをかかげて」を読むべきだ!と主張しているものもある。
ここで一気に萎えた(笑)
「ともしびをかかげて」を購入前に、(これもつん読状態だった)マリオン・ジマー・ブラッドリーの「アヴァロンの霧」(こちら)を読んでしまおう(笑)