ワーグナー「パルジファル」

クナッパーツブッシュ指揮 バイロイト祝祭管弦楽団(1959)
パルシファル:ハンス・バイラー
グルネマンツ:ジェローム・ハインズ
クンドリー:マルタ・メードル
アンフォルタス:エーベルハルト・ヴェヒター
ティトゥレル:ヨゼフ・グラインドル
クリングゾール:トニ・ブランケンハイム
以前から書いているが、クナの「パルジファル」のオフィシャルは2種類あるが、1951年盤はゲネプロ中心、また1962年盤は同年のミュンヘン・フィルとの「ワーグナー管弦楽曲集」を聴いてもわかるとおり、枯淡の境地、巨人への道のりを歩み始めた時期である。
よって、双方とも比較的落ち着いた「パルジファル」なのだが(勿論激しい部分もあるのだけれど)この1959年盤は、なんと情感あふれる演奏である事か。上記の理由から、比較的とっつきにくいかもしれないオフィシャル盤より、すんなり心に入ってくる。
東京で偶然見つけなければ、こういうクナの「パルジファル」を知らずにいたかもしれないと思うと、やはりうまく出来ているものだと思う。
1962年盤の再聴や、1954年盤、1960年盤、1964年盤を聴いてからでないと結論は出せないが、個人的には今のところベスト、音もそんなに悪くないので1962年盤でとっつきにくいと思った人にはお勧め。
歌手陣は、パルシファルのバイラーが若干演技過剰で音程が不安定になる。
アンフォルタスのヴェヒターとクリングゾールのランケンハイムは、共に王として、悪役としての威厳が足りない。
しかし、そんな事はこの盤に関しては大きな傷ではない。


ちなみに、なぜ1954年盤、1960年盤、1964年盤を聴きたいかというと、
1954年盤は、世評が高い。
1960年盤は、以前「ばらの騎士」の最上の元帥夫人のひとり、と個人的に評したクレスパン(こちら)が、1958年では、クナの指揮に慣れていず、リハーサルで罵倒されたせいもあって、本番でも呼吸が合わず(出典不明)1959年には上記のメードルと交代してしまったのだけれど、1960年に復帰し、今度は見事なクンドリーを演じた、という世評があるから。(クナに慣れた人なら罵倒も受け流していただろうに(笑))実はメ―ドルやダリス(1961年盤〜1963年盤)は個人的にはあまり好みではないので、それ以外のクンドリーを聴きたい、というのもある。
そして、1964年はクナ最後のバイロイトのみならず、演奏自体が最後なのだ。体の衰えがストレートに演奏に出ているらしいが、聴かずにはおれまい。

ネット上では、クナの「パルジファル」の収集など、思いもよらなかったのに、気が付いたら次々と揃え始めている、という声をみかけるが、その気持ちがわかってきたぞ、どうしよう(汗)