ワーグナー「パルジファル」

ハンス・クナッパーツブッシュ指揮:バイロイト祝祭管弦楽団(1962)
パルシファル:ジェス・トーマス
グルネマンツ:ハンス・ホッター
アンフォルタス:ジョージ・ロンドン
ティトゥレル:マルッティ・タルヴェラ
クリングゾール:グスタフ・ナイトリンガー
クンドリー:アイリーン・ダリス
花の乙女:グンドゥラ・ヤノヴィッツ
毎日せっせとクナの「パルジファル」を聴く日々であるが(笑)合間合間にオフィシャルの1962年盤を聴きなおしたりしているが、この演奏は、ちょっと別次元のような気がしてきた。
以前、「「パルジファル」という音楽を、クナ自身が生きている」と書いたが、他の演奏では演奏する側と聴く側との相対関係があるのだが、この1962年盤は、演奏する側から聴き手に対して、特別な働きかけをしないのに、ただそこに「存在」するだけで、いつの間にか、聴き手さえも「パルジファル」の音楽に一体化してしまうような、不思議な演奏なのだ。
なので、通常の「音楽鑑賞」の尺度では測れない次元にある演奏と言える。
この演奏を、「ステレオという事しか価値が無い」とか「他にもっと音の良い新しい名盤がある」とか「この演奏を褒めるのは評論家の言葉を鵜呑みにした愚かな行為だ」などとけなす意見があるのだが、それは通常の「音楽鑑賞」の観点に縛られた人の、頭で考えた理屈であって、普通に心を開いてこの演奏を聴くならば、必ず「誰がなんと言おうと、これは何か特別な演奏なのではないか」と気づいてくるに違いない。