やっぱりモーツァルトが好き

すっかりオペラ・モードで、ワグナーやら、今まで見向きもしなかったバロック・オペラやらイタオペ等を聴いて、目からうろこの日々ではあるが、やっぱりモーツァルトに戻ってゆく。
以前にも書いたが、メロディの素晴らしさもさることながら、登場人物の性格描写、ストーリーの展開を、音楽でやってしまうこと。重唱のメロディのからみが、絶妙で複雑な事。これは彼の同時代を含めて、前にも後にも彼に匹敵する作曲家はいない。
私も昔は「日本」の標準的なクラシック・ファンであったから、やはり「クラシックの王道は絶対音楽であり交響曲である」等と思い込んでいたから、例えばモーツァルトの交響曲は素晴らしいけど、展開部が物足りない、等と思っていたものであるが。
そもそも、モーツァルトの時代の交響曲の展開部は、シンプルであたりまえであり、それが、モチーフを分解して、これでもか、と展開の妙技を見せるのは、ベートーヴェンの発明である。
しかし、だからと言って、モーツァルトは新しい形式を発明しなかった。当時の形式にのっとって、天才性を発揮した、というのも、違う気がする。それが、オペラなのだ。
登場人物の性格描写など、ワグナーのライト・モチーフの先取りであるし、アリアにソナタ形式を持ちこもうとした節もある(そういう研究書を読んだ記憶がある)
繰り返しになるが、ストーリー展開を表す音楽やら重唱の複雑さも含めて、モーツァルトは(同時代の耳にはピンと来なかったかもしれないけれど)充分オペラ革命を行っていたのではないか。
だから、他のオペラ作曲家に無い深淵性をもっているがゆえに、私は最終的にやはりモーツァルトのオペラに戻ってゆくのだ。
モーツァルトは耳触りがいいだけの音楽だ、等と考えている人がいるかもしれないが、それはとんでもない話なのだ。
・・・というわけで・・・・