「夜鶯荘」と「まっ白な嘘」

最近、所有しているいろいろなミステリーの短編集を読み直しているのだが、江戸川乱歩編の「世界短編傑作集」に収録されている、クリスティの「夜鶯荘」を読んだら、フレドリック・ブラウンの「まっ白な嘘」(短編集「まっ白な嘘」に収録)を思いだしたので読み返した。
双方とも、相手の過去を深く知る前に結婚した新婚の妻が、夫が実は殺人犯だったのでは、と疑う話なのだが、結末は正反対である。
両者とも、語り口の天才性には定評があるし、その個性の違いを楽しめるので、興味のある方は読み比べていただきたい。
しかし、久々に読んだが、やはりフレドリック・ブラウンはすごいな。
ちなみに「まっ白な嘘」の原題は"A Little White Lye"でなのだが"White Lie"(罪の無い嘘)と作品に出てくる"Lye"(化学灰汁・石灰?)とをかけている、なかなかに洒落たタイトルである。
邦訳の「まっ白な嘘」も「まっ赤な嘘」にひっかけてあり、日米とも別の意味で秀逸である。
さらにちなみに、短編集のタイトルは"Mostly Murder"といい、直訳すれば「大方、殺人事件」とでもなるのか。
「まあ、だいたい殺人事件の話ばかり入ってますよ〜」と、言った、わざと軽い感じでつけた雰囲気がまた、ブラウンらしくて面白い。
PS.クリスティの「夜鶯荘」は、ハヤカワの「リスタデール卿の謎」に「ナイチンゲール荘」として収録されている。