「ファルスタッフ」を歌う人

以前にも書いているが、ヴェルディの「ファルスタッフ」は大好きなのだけれど、CDは例のトスカ二ーニ全ヴェルディ録音BOXを買うまでは、買った事は無かった。
これも何回か書いているのだが、ちょうど私がオペラに興味を持ちだした1980年前後、FMのエアチェックで、トスカ二―ニ盤はテープに録音してよく聴いていた。
さらに、小澤征爾指揮の二期会公演のテレビ放映時、テレビ音声が入るラジカセで、テープに録音して、これもよく聴いていた。
そしてさらに、ちょうどジュリーニ盤が発売され(1982年録音)やなりFMのエアチェックからテープに落として聴いていた。
アナログ時代はレコードは高かった。オペラともなると何枚組にもなるのでさらにお高い。
お金のない青春時代は、「ファルスタッフ」はこの3つをかわりばんこに聴いていたのだ。
そうすると、気づいてくる事があって、勿論個人的な好みなのだが、主役のファルスタッフが、あまりにスマートな美声だと、なんかいやだな、と感じるようになったのだ。
上記の3種でいうと、ジュリーニ盤のレナート・ブルゾンにあたる。
そして、歳をとって多少お金に余裕ができて、さあ「ファルスタッフ」のCDは何を買おうとなった時(ちょうどトスカニーニ盤は廃盤だった)指揮者や主役の歌手を見て、これだ!と思うものが無かったのだった。
ファルスタッフは、自分では頭のいいつもりだろうが、実は抜けている。そこらへんの微妙なところをうまく表現できるバリトンは、なかなかいない。勿論、美声でろうろうと歌えばいいのだ、という人は悩む必要はないのだけれど。
とにかく何でもいいから映像で「ファルスタッフ」を見たくて買ったLDはプリシュカで、まあ及第点だったが、レヴァインも特に良かったわけではないし、別にフレーニをわざわざ呼んでくる事もないだろうに、等と思ったものだった。
で、聴いていないのに文句をつけるのはよくないのだけれど、
フィッシャー=ディースカウは、たぶん美声で演技過剰だろうからバツ(笑)
ゴッビは、あまりにも悪賢そうなのでバツ(笑)
ファン=ダムは上品過ぎでバツ。
以前、ようつべで見たタディは合格点だが、指揮がカラヤンでバツ(爆)
ホッターやエーデルマンといったドイツ勢は、興味があるがドイツ語歌唱でバツ。
長らくフォードを歌っていたパネライもあるが・・・・微妙だな。
刷り込みというのは恐ろしいもので、やはりトスカニーニ盤のヴァルデンゴになってしまうのだった。
で、トスカ二―ニBOXを買うまで「ファルスタッフ」のCDは買わなかったというお話。
PS.
小沢盤の栗林義信もOKなので、しつこいようだがNHKよ、出してくれ。