修道女フィデルマの洞察(2000 邦訳:2010)

ピーター・トレメイン
「修道女フィデルマ・シリーズ」の邦訳第5弾であり、「洞察」と同様にシリーズ第9作の短編集の15作から5作をを訳出したもの。残りの5作もいずれ邦訳される事を望む。
「修道女フィデルマ・シリーズ」は短編から始まったと以前書いたが、ここには第1作「まどろみの中の殺人」をはじめてとして長編が執筆される前の作品が5作中3作を占めている。
そのせいか、いつもの「意外な犯人」性があまりなく、読者の想定内で解決する事件が多いようだ。
そもそも「修道女フィデルマ・シリーズ」執筆の理由が、古代アイルランド社会の紹介にあった、ということで、最初はミステリーとしてあまりに凝りすぎるのも、という意図があったのか、それとも、ピーター・トレメインの腕が、その後にあがっていったのか・・・・。(長編直前の「晩祷の毒人参」などは二重のどんでん返しで読み応えがあるのだが)
実は、日本で最初に出版された短編集「修道女フィデルマの叡智」を読んだ時に、なぜ初期作品をもっと収録しなかったのだろう、と思ったのだが、もし初期作品を中心に翻訳されていたら「長編は面白いが短編はミステリーとしては平凡だな」と、誤った印象をもったかもしれないので、収録作品としては、あれで正解だったのだろう。なので、これから「修道女フィデルマ・シリーズ」を読む人には、最初に買う本としてはお勧めしかねるかもしれない。