ブラッドベリ、ブラウンと黒人奴隷問題

ブラッドベリ、ブラウンと黒人奴隷問題
長いお盆休みだから、というわけでもないが、懐かしいSFを読み返したりしている。
ブラッドベリの「火星年代記」は今読んでも傑作だなあ、と改めて思う。
この作品はいわゆる連作短編の形式だが、その中に「空のあなたの道へ」という作品があるが、この作品は「黒人奴隷問題」を扱ったものである。いわゆる黄金期のアメリカSFにはけっこう「黒人奴隷問題」を扱ったものがあるし、対ロボット、対異星人も実は白人対有色人種の移し替えだったりするが、それはさておき。
こういう作品を読むと思い出すのがブラッドベリと並ぶ(というか別の意味で)SF短編の名手フレドリック・ブラウンの「未来世界から来た男」である。
「未来世界から来た男」というタイトルはいろいろな夢が広がる。なので、この作品の本当のタイトルは"dark interlude"なのだが、この作品のみならず、この作品が収録されている短編集のタイトルも(たぶん日本の編集者の思惑で)このタイトルになった(タイトルの原語は"Nightmares And Geezenstacks")
が、実はこの作品も「黒人奴隷問題」を扱った作品なのだ。
以下ネタバレになるが、そのストーリーを紹介する。
保安官に取り調べられている男。その男の妹が「未来世界から来た」と自称する男と結婚した。その男が言う事には「未来世界には人種問題は存在しない。なぜなら、すべての民族が混血してしまっているからだ」それを聴いた男は「未来世界から来た男」を射殺する。保安官は「君は当然の事をした」と言って話は終る。
おわかりだろうか。彼は妹と結婚した相手に黒人の血が混じっていると知って、かっとなって「未来世界から来た男」を射殺し、保安官がそれを当然と言い放っているのだ。
これを初めて読んだ当時は小学校高学年か、もしくは中学に入ったばかりの頃だったと思う。知識としてはアメリカに奴隷制度があった事も、黒人差別があることも知ってはいた。しかしここで語られる「差別する側」の愚かさ、頑迷固陋の生々しさは衝撃的であった。