バルトーク「青ひげ公の城」について

バルトーク「青ひげ公の城」について
これだけ「青ひげ公の城」をいろいろ聴いているといろいろと気づくことがある。
フリッチャイのスウェーデン放送交響楽団盤は、演奏時間が短いのだが(46分)聴いている時はさほど「速い」とは感じなかった。かえって他の演奏を聴くと「遅い」というより「弛緩」していると感じられた。
下手に緩急をつけて、テンポをいじりすぎると「緩」の部分が「弛緩」に感じられる曲なのかもしれない。
さらに以前も書いたが「この物語が「非人間」対「人間」の、寓意性のある象徴劇」であるとするなら、オケは激高しても、青ひげ公は人間的な激高をしてはいけない。その点フィッシャー=ディースカウを初めてとする各歌手はのきなみ落第であるが、ショルティ盤のコロシュ・コヴァーチュが及第である。
また、中間部のクライマックスの最中に、それを中断するようにユディットが「あなたの国は広くて美しい」と2度歌うのだが、ここはあっけにとられて茫然とつぶやくように歌うのが好みで、その点シルヴィア・シャシュがチャーミングなつぶやきで及第点。
そういった事をもろもろ考慮すると、個人的にベストはショルティ盤ということになりそうだ。LDから焼いたDVDでは、車では聴けないので同音源をCD化したものを購入しようかな。
ちなみに、なぜ「音楽的には最高に面白い「青ひげ公の城」」と書いたブーレーズの旧盤を採らないかというと「音楽的には最高に面白い」のだが「オペラ」としては、歌を前面に出した正攻法のショルティが、結局は一番気持ちいい演奏だ、という結論に達したためだ。
なので、次点をブーレーズの旧盤とフリッチャイのスウェーデン放送交響楽団盤で分け合う事にする。フリッチャイ盤は、音さえよければベストだったんだが。