クリフォード・D・シマック「中継ステーション」

クリフォード・D・シマック「中継ステーション」(1963)
「都市」はけっこう読み返すのだが「中継ステーション」は久々である。それは「大事に読みたいのでおいそれと読み返したくない」という感情のような気がする(「都市」は気軽に読み返せるが、どちらが上と言うわけではない)
初めて読んで感動したころは、それこそシマックの作品は「都市」しか読んだことがなかった。今、読められるだけのシマック作品を読んでからこの作品を読むと、この作品も連綿としたシマック節の作品のひとつなのだとよくわかる。
田園風景、善意、さまざまな異星生物、惜しげもなく投入されるアイデア、そして人類と宇宙の行く末・・・・・
例えば「幻が人格を持つことによる葛藤」という「ソラリスの陽のもとに」(というか映画の「惑星ソラリス」)の主要テーマが、サブプロットとしてさらっと出てきたりする。
そういった作品であるこの「中継ステーション」と他のシマック作品との差は何かというと、まずは切迫感であろう。
キューバ危機(1962)のあたりのSFは、多かれ少なかれ世界核戦争の危機を意識せざるを得なかっただろうが、この作品もその一つだといえる。
その派生として、切ないながらの抒情性が作品全体を覆う。やはりここら辺なんだろうな。
やはりシマックの作品でまずおすすめするのが「都市」と「中継ステーション」そして「小鬼の居留地」で、それでシマックが気に入ったら他の作品に手を伸ばしてほしい。