A・E・ヴァン・ヴォクト「非Aの世界」

A・E・ヴァン・ヴォクト「非Aの世界」(1948)
こちらの作品は「武器製造業者」より手ごわい。「武器製造業者」は読者が五里霧中だが、こちらは主人公の記憶が何者かによって改ざんされている、という設定なので、主人公も五里霧中なのだ。
記憶が云々というのはフィリップ・K・ディックの先取りと言えるし、フィリップ・K・ディックの初期のローラー・コースター的手法はあきらかにヴァン・ヴォクトの影響を受けている。(フィリップ・K・ディックはヴァン・ヴォクトの後継者と言われて、悦に入っていたという逸話もある)
さて、「武器製造業者」で、個人的な(あくまで個人的な)ヴァン・ヴォクトの読み方がわかった。
とにかく前半は、五里霧中の中のご都合主義なチープな「陰謀、サスペンス」の連続に我慢する。そうすると後半で、話が宇宙スケールになってきて、最後まで読み切るための興味がわいてくる(笑)
それでもこの作品は、明らかに後付け設定が多すぎないか?っていうか、矛盾や破綻があるのでは?まあ、それがこの人の魅力らしいから、しょうがないのか。