A・E・ヴァン・ヴォクト「スラン」

A・E・ヴァン・ヴォクト「スラン」(1946)
「宇宙船ビーグル号」の元になった「黒い破壊者」とともに1940年に雑誌掲載されてヴァン・ヴォクトの出世作となったこの作品でヴァン・ヴォクト再読シリーズを締めたいと思う。
ヴァン・ヴォクトを読み進めてきて、あらためてこの処女長編を読むと、その後のヴァン・ヴォクトの特徴が、ほぼこの作品で網羅されていることがわかる。
ジェットコースター的展開、政治的駆け引き、サスペンス、てんこもりの疑似科学、ラストのどんでん返しのパターン。
それでも「宇宙船ビーグル号」と共にこの作品が比較的普遍的な魅力を持っている原因は、すべてにおいてやりすぎていないので、読者を置き去りにしていない、という点にあると思う。