ディープ・パープル「カミン・ホーム」と「ラスト・コンサート・イン・ジャパン」

ディープ・パープル「カミン・ホーム」
リッチー脱退後、トミー・ボーリンが参加した「カム・テイスト・ザ・バンド」のオープニング・チューンであるが、当時からアンチ・リッチー・ファンは手放しでトミーを褒めていたのだが、私は昔からこの曲が嫌いだった。
手元にはなぜか怪しい廉価のパープル・ベストが何枚かあるのだが、その中の1枚にこの曲が収録されているので、久々に聴いてみた。
リッチ―脱退後も、いわゆるパープル・テイストの曲をやらねばならない、というしがらみがあった事は充分わかるし、彼らの本位ではない曲かもしれないが、それでもあえて言わせてもらうと。
当時でさえ手垢が付いているといえる冒頭のコード進行にもがっかりだが、ワンコードに乗った、なんの起承転結も無い単なる速弾きのギターソロが最もがっかりだ。
リッチ―のギターには、ちゃんと起承転結があるのだ。まあ、好みの問題なんだろうが。

ディープ・パープル「ラスト・コンサート・イン・ジャパン」
この、かなり問題のある演奏のライブが、ディープ・パープルの解散後、そしてトミー・ボーリンの死後に、日本でのみ発売された、というのは意味深いものがある。
日本でのみ、という事は、世界レベルで発売できる内容ではない、ということである。
それでも日本でのみ発売されたのは、日本ならこの内容でも許してくれると思ったのか、出世作「メイド・イン・ジャパン(ライブ・イン・ジャパン)を生んだ日本へのお礼なのか、どちらにしても、日本人なら喜んで買うであろう、と踏んだからに違いない。
リッチ―はいない、トミーはボロボロ、しかし日本人はそこにリッチーの幻影を見ようとしてこのアルバムを買ったのだ。そして、私もその一人だった。
というわけで、一時は高値がついていたが、今は輸入盤でけっこうお安く入手できるので買ってしまった。
さて、トミー・ボーリンの不調をカバーしようと、ジョン・ロードが大活躍・・・・というのを想像していたのだが、実はジョンも腕を痛めていて不調。デイヴィッド・カヴァデールとグレン・ヒューズのボーカルも好調な時には及ばない。
ただ一人、イアン・ペイスのみ切れっ切れの絶好調、次いでグレン・ヒューズのベース、リズム隊がしっかりしていれば、音楽はなんとか成り立つという典型的な例。
以前にも書いたが、ライブ・イン・ジャパンもメイド・イン・ヨーロッパも、オフィシャル以外の音源が発売されていて、当時のすべての演奏の出来が良かったわけではなく、オフィシャルがいかに出来の良いトラックを編集していたかがわかってきていた。しかし「ラスト・コンサート・イン・ジャパン」は1回公演のため、出来のいいトラックを集めるどころの騒ぎではなかったのだ。そういう意味では貴重な記録かもしれない。