モーリス・ルブラン「金三角」

モーリス・ルブラン「金三角」
ミステリーより冒険色が強い(という情報)ということで、こちらも読むのを後回しにしていた作品。こちらも第一次世界大戦が舞台。
過去の謎、ロマンスは好みだが、トリックはすぐにあたりがつくし、成り立たせるにはちょっと無理があるか。
後半ルパンが登場すると、それまでの主人公の役割をすっかりかっさらってしまうので、その主人公の立場が無い。
なので本来はルパン無しで、そのままその主人公が果たすべき役割を、ルパンを無理やり登場させて、引き継がせた感がありありとする、元々日刊紙に連載されていたので、出版社からの要請でもあったのだろうか。
なので、作品としては大変不自然ではある。
しかし、実はルパンは「813」の終わりで、死ぬことがほのめかされている。
第一次世界大戦もこう着状態になり、人心も荒廃する中、フランスのために活躍するルパンの復活が一服の清涼剤であった、と見る向きもある。
第一次世界大戦が無かったら、ルパン・シリーズは「813」で終わっていたかもしれない、と思うと、歴史の機微を感じる。
これにて、ルパン・シリーズ制覇は終了。