ジョン・ディクスン・カー「カー短編全集4:幽霊射手」

ジョン・ディクスン・カー「カー短編全集4:幽霊射手」
3巻までは、カー生前に発行された短編集に収録された作品だったが、ここからはカー死後に発行されたカー研究家グリーン氏の編集によるレア作品集となる。
第4巻と第5巻は"The Door to Doom"を2冊にわけて文庫化したもので、4巻には、グリーン氏による評論、処女長編「夜歩く」以前の短編とラジオドラマを収録。
処女長編「夜歩く」以前の作品5編のうち4編が、若き日のアンリ・バンコランが探偵役である。つまり、これらの作品で作風を確立して、満を持して「夜歩く」が書かれたということになる。
そのバンコランものでは「第四の容疑者」が、短編ながら二重三重のどんでん返しとシニカルなエンディングが印象的。
ラジオドラマというのは、耳からのセリフだけで理解させなければならない、しかし臨場感という武器を持つ。なので、謎解きはシンプルに、展開はサスペンス色豊かに、という工夫がなされており、そういう面白さを満喫できる。