北村薫「六の宮の姫君」

北村薫「六の宮の姫君」(1992)
以前にも書いたが、もしかしたら私が初めて読む北村薫作品であったかもしれない「円紫さんと私シリーズ」第4作である。番外編と見る向きもあるが、これはシリーズのクライマックスであろう。なぜならば解説によると「私」が構想する「六の宮の姫君」をテーマとする卒論は、北村薫自身の卒論のテーマであったからだ。つまりはこの作品を書くためにこのシリーズが綿密に始められた、といってもいいのではないか。
前作のその後もちらっと触れているし、やはりこの作品からではなく、シリーズ1作目から読んで正解だった。
さて、こういう実在の人物や歴史に関する「知的サスペンス」ともいうべきジャンルは本当に大好物で、もしかしたら通常のミステリーより好きかもしれない。
ちなみに、作中に「私」がアルバイト先の出版社の社員から、クラシックのチケットをもらうシーンがあったが、インバル指揮、東京都交響楽団によるベルリオーズの「レクイエム」だとか。調べたら1991年に確かにこの公演はあった。しかも名演だったらしい。