池波正太郎「剣客商売:罪ほろぼし」

池波正太郎剣客商売:罪ほろぼし」
解説にもあるが、剣客商売シリーズは後半になるに従って、人間の暗部をえぐる作品が増え、深みはあるが、陰鬱な印象はぬぐえない。
そんな中、十二巻に収録されている「罪ほろぼし」は、久々にほっとするさわやかな作品である。

二巻収録の「辻斬り」において、秋山小兵衛の活躍により、辻斬りをしていた旗本が捕縛され、その身は切腹、お家は断絶となるのだが、その旗本の遺児源太郎と知己となった小兵衛は、その真摯な性格と、商家の警護という、元旗本の嫡子としては落ちぶれてしまった境遇に、ある種彼に対して、申し訳ない、という気持ちになる。
その後、二人の活躍により、その商家に対する押し込み強盗を未然に防ぐのだが、小兵衛はその事により源太郎に対し罪ほろぼしができたのでは、と思う。
しかし、その後挨拶に訪れた源太郎は、商家を救う事で、父の罪に対するいくばくかの罪ほろぼしが世に対してできたのでは、と語る。

ちなみに、この作品の漫画版はコミックスでは発売されていない(雑誌では発表済みのはず)が今から楽しみである。