ホルライザーのワーグナー「リエンツィ」

ワーグナー「リエンツィ」
ホルライザー指揮 シュターツカペレ・ドレスデン(1976)
ルネ・コロ:コーラ・リエンツィ
シヴ・ヴェンベルイ:イレーネ
ニコラウス・ヒルデブラント:ステファーノ・コロンナ
ジャニス・マーティン:アドリアーノ

EMI ワーグナー オペラ・ボックスである。
「リエンツィ」は、序曲は聴いたことはあっても、なかなか本編を聴く機会がないので、このBOXのおかげで聴くとこができる。実は、ワーグナー生前の、最も金銭的に成功した作品だ、ということは知らなかった。まあ、後年の作品はルートヴィヒ2世の庇護下にあったから、金銭的成功は眼中になかったろうな。
「リエンツィ」は正式タイトルが「リエンツィ、最後の護民官」であるが、ローマというから最初は古代ローマかと思った。しかしリエンツィは14世紀に実在したリエンツォの事だという。ならば現在のドイツにあたる「神聖ローマ帝国」か「東ローマ帝国」かと思いきや、それも違うという。では、ここでいう「ローマ」とは何か、というと当時イタリア半島の一部にあったローマ教皇領内の「ローマ市」とのこと。ずいぶんスケールが小さくなってしまったな。
あらすじは、超簡単に言うと、民衆の人気を得て護民官となったリエンツィが、今度は圧制を敷くようになって、民衆に殺される、という話(説明が簡単すぎ(笑))しかし、当時の革命を求める世相と相まっての大ヒットになったとのこと。
常に聴衆の興奮をあおるような曲作りは、マイアベーアあたりのグランド・オペラに近いなあ、と聴いていたら第2幕にバレエ・シーンがある。これは間違いなくグランド・オペラである。ワーグナーはパリの初演を希望していた、というのもやんぬるかな。
全体的に、かなり見事な作品で、変な話、これがワーグナーの作品でなかったら、もっと上演機会が多かったかもしれない。(グランド・オペラのファンはワーグナーだから聴かないだろうし、ワーグナーのファンはグランド・オペラだから聴かないという理屈)そういう意味では不運な作品と言えるか。
ホルライザーという指揮者は今回初めて聴くが、序曲冒頭の、心に染み入る音作りに一発でもっていかれてしまった。録音は多くないが「ばらの騎士」があるからいつかは聴いてみたたい。
歌手陣はルネ・コロをはじめ、間然するところがない。