「実朝を殺した男―『吾妻鏡』殺人事件」(2004)楠木誠一郎

前置きがちょっと長い。
以前、奥州藤原氏義経関連の本を集めていた時、この作者の「義経の野望―異説『藤原四代記(1992)を読んだ。いわゆる歴史IFのシミュレーション小説である。
その時はそのままになっていたのだが、最近、そういえば作者の事を知らないなあ、と思って調べたら1960年生まれでほぼ同世代、かなり多作な推理作家であることがわかったのだが、「日本史おもしろ推理―謎の殺人事件を追え」(1992)「謎の迷宮入り事件を解け―歴史おもしろ推理」(1993)が面白そうなので買ってみた。歴史上の殺人事件等の独自の視点からの推理を集めたものだが、その中でも鎌倉幕府三代将軍源実朝暗殺の黒幕が目から鱗だった。
そして、表題の作品は、その源実朝暗殺の黒幕の楠説を歴史推理として新たに展開したもの。
これがなかなかに面白かった。歴史推理のパターンとして現在の事件も並行して起こるのだが、驚愕のどんでん返しが待っていた。
また、作中の財前女史、歴史雑誌の若き編集者の酒見のコンビ(と二階堂警部)のキャラも立っている。このコンビでシリーズ化とかしてほしかった程だが、財前女史の専攻が源氏三代の中世史となると、この作品以外だとちょっと話が広がりようがないからしょうがない。しかし、惜しいな。