バレンボイムのフォーレ「レクイエム」

フォーレ「レクイエム」
バレンボイム指揮 パリ管弦楽団(1974)
エディンバラ音楽祭合唱
シーラ・アームストロング(S)
フィッシャー・ディースカウ(Br)
フォーレの「レクイエム」は(知っている限りであるが)古い指揮者による大時代的な演奏の録音が無い。例えばマタイ受難曲だったら、ピリオド演奏も大時代的なメンゲルベルクの演奏も両方楽しめるのだがフォーレの「レクイエム」はそういう事がができない。
と、思っていたらバレンボイム盤がトンデモ演奏というネット情報を見て興味本位で購入してしまった。
結論から言うと、言うほどトンデモ演奏ではない。
大変遅い演奏であること、かつピアニシモからフォルティシモまでの振り幅が非常に大きい。これは、ベートーヴェンのミサ・ソレムニスあたりを演奏するやり方である。フランス音楽としての愉悦やこの曲のもつ神秘性よりも悲壮感の方が先に立って入る。
これは、フォーレの意図したもの、そして我々がフォーレの「レクイエム」に求めるものとはかなりかけ離れている。
かけ離れてはいるが、決して奇をてらってものではなく、演奏自体は実に真摯である。なので、決して聴いていて不快にはならない。
最初の1枚には決して勧められないが、数枚聴いて、さらに別のタイプの演奏を聴きたい時にはこの最右翼の演奏がぴったりではないか。